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「あの宇和島東の鈴木って、誰?」大学恩師が語るマラソン鈴木健吾25歳、“無名”の高校時代から“日本新”までの10年間 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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posted2021/03/01 17:03

「あの宇和島東の鈴木って、誰?」大学恩師が語るマラソン鈴木健吾25歳、“無名”の高校時代から“日本新”までの10年間<Number Web> photograph by JIJI PRESS

2月28日びわ湖毎日マラソン。日本新記録で優勝した鈴木健吾(富士通)

 このシーズンのターゲットは、フルマラソンだった。11月の全日本大学駅伝ではアンカーとして優勝のテープを切り、箱根では2区区間賞の本命と見なされた。しかし、最後の箱根の結果は区間4位だった。

「箱根も大切なんですが、“大学4年間の卒業論文”として東京マラソンに照準を合わせていました。どちらかといえば、練習もスピードよりもスタミナ重視でした」

 卒業間際の初マラソンは、2018年2月25日の東京マラソン。タイムは2時間10分21秒だった。レース直後に、大後監督に卒論の評価を聞いたことを記憶している。監督の答えは、こうだった。

「大学4年生でこれくらい走れれば、文句なく『優』をつけます」

 学究肌の大後監督らしい評価だった。

2019年MGCは“まだ発展途上だった”

 そして鈴木は2018年4月に富士通に進むことになるが、大後監督は鈴木のデータをすべて富士通側に提供したという。

「4年間の練習メニュー、設定タイム。それに生理学的なデータもすべて提供しました。正直、学生時代は土台を作るにも時間が足りないんです。私に出来たことは、土台を作る方法論を健吾にインストールしたという感じでしょうか。その段階で富士通さんに送り出しました」

 入社後、MGCの出場権を獲得し、2019年に行われたMGCレースでは中盤で仕掛けを見せるなど見せ場は作ったものの、7位だった。

「MGCの時点では、まだ発展途上の最中でしたね。ところが、去年の夏(2020年)の菅平合宿で健吾を見て、びっくりしました。上半身がうまく使えるようになって、明らかに経済性が向上していたんです。どうやら、富士通さんの方で、自重負荷から進化させ、バーベルなどを使ったトレーニングに取り組むようになって、いよいよ本格化した感じでした」

2時間4分台は「さすがにびっくり」

 その成果が、びわ湖毎日マラソンに表れた。大後監督も愛弟子のレースをテレビで見守った。

【次ページ】 2時間4分台は「さすがにびっくり」

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