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天理大優勝の立役者フィフィタを覚醒させた“劇薬”とは…来日7年、好きな日本語は「勇気」心優しい青年の夢 

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倉世古洋平(スポーツニッポン新聞社)

倉世古洋平(スポーツニッポン新聞社)Yohei Kuraseko

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posted2021/01/26 11:00

天理大優勝の立役者フィフィタを覚醒させた“劇薬”とは…来日7年、好きな日本語は「勇気」心優しい青年の夢<Number Web> photograph by SportsPressJP/AFLO

早稲田大FB河瀬(15番)と健闘をたたえ合う天理大CTBフィフィタ

 本気を出さなくても敵なし――。関西であぐらをかいていた大器が、努力に目覚めた。体脂肪は、一番多い時に比べて6%減。10%ほどになった。サンウルブズ・大久保直弥ヘッドコーチ(現ヤマハ発動機ヘッドコーチ)の「日本代表を目指して頑張れ」というエールがいつも頭にあった。「しんどいことが嫌いだった。フィットネスのメニューでも、(大柄な選手が多い)プロップが前を走っているのに、自分はその後ろを走っていた」という自他共に認める「ランニング嫌い」が、汗をかくことをいとわなくなった。

 サンウルブズの仲間から「プロの心得」を学んだことも姿勢を変えた。

「ごはんや自己管理が勉強になった。脂ものを控えて、サラダやフルーツを食べるようになった。以前は野菜が好きじゃなかったけど。(足をつらないように)水分を普段からしっかり取るように意識した」

 自分で「変わった」という人間に限って説得力が弱い時がある。しかし、フィフィタの場合は誰もが認める変化だった。小松節夫監督のいつもの淡々とした口調に、感嘆が混じる。

「サンウルブズを経験してまじめになった。オフの日もグラウンドに出た。体も絞ってキレが出た。フィフィタが変わったことで、周りにもいい影響を与えた」

「とにかくスピード、と言われた」

 伝染したのは、取り組み姿勢だけではない。スーパーラグビーで得た知識が、日本一になるために「何か」を求めていた天理大バックス陣の「サプリメント」になった。

 最も影響を受けたのが12番CTB市川敬太(4年)だ。

「サンウルブズから帰ってきたサイア(フィフィタ)に、とにかくスピード、と言われた」

 重い重量をゆっくり上げるトレーニングをやめ、軽めの重量を、瞬発力を生かして持ち上げるようにした。瞬間的なスピードが上がると同時に、当たりまで強くなった。

 決勝の早稲田大戦は、先制トライを含む4トライ。13番のフィフィタとの息の合った連係で次々とインゴールに飛び込んだ。「ラグビーで一番大事なのはスピード」という173cmの小兵の実感は、頼もしいパートナーがいたからこそたどり着いた境地だろう。

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