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右目を失明後に“クラブW杯常連チーム”に入団! 松本光平が「ケガはむしろプラスかも」と思うワケ 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byRyo Sato

posted2021/01/21 11:00

右目を失明後に“クラブW杯常連チーム”に入団! 松本光平が「ケガはむしろプラスかも」と思うワケ<Number Web> photograph by Ryo Sato

右目を失明、左目もぼんやりとしか見えなくても、前向きにサッカーを続けている松本

「最初はトラップできない」

 歩行がスムーズになると、次にランニングに移行する。気持ち悪くなる感覚もなくなって「苦労せずに」走れるようになる。徐々にスピードを上げても問題なかった。

 9月に入ると今度はサッカーのできる公園近くに引っ越しをして、ボールを蹴る練習に入る。しかしさすがに「ぼんやり見える」では対処できないことが多々あった。

「最初はトラップできない、浮き球でくるのが分からない。とんできたボールをかわす、サッカーとは違う種目になっていたんですけど」

 怖さがあったが、やっていくたびにボールが何となく分かるようになっていく。結論「場数をこなせば慣れる」。サッカー仲間のサポートもあって、ボール回しもできるようになった。蹴って、止めて、動いて。毎日それを繰り返して、パス交換の距離も段々と長くしていく。

 ここまでできた段階で拠点を地元の大阪に置くことにした。トレーニングをサポートしてくれる協力者があらわれ、対人プレー、ミニゲーム、トレーニングマッチと段階を一気に上げていく。社会人チームに入れてもらい、ユース、大学、社会人などいろんなチームと対戦して実戦感覚を取り戻そうとした。併行して筋力トレーニングもこなしていく。

「ラインの上げ下げも普通にやれています」

 防護用のゴーグルがあるため相手と激しく競り合っても問題ないことは確認できたが、さらに視野が狭くなったり、息が上がるとレンズが曇ったりとマイナス面にも慣れておく必要があった。

 サイドバックの視界もつかんでおかなければならない。右側の視覚情報が足りない難しさがあった。

「(右サイドバックのときは)中にいるパスの出し手は分かるんですけど、ボールをもらって右向いた瞬間に突然、人が出てくる感じなんで最初は“わっ”と驚いたことも多かったんです。逆に左をやるときは中にいる出し手が分かりづらい。中を向いて出し手を見るようにすると、今度は前が分かりづらい。どっちのサイドも違う難しさはあるんですけど、どっちのサイドも練習や試合をして場数を踏んだことで(視界の確保も)段々と自分なりにできるようになりました。ラインの上げ下げも普通にやれています」

 新たな問題も出てきた。

【次ページ】 競技復帰の目標は、「チーム光平」全体の目標に

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松本光平
オークランド・シティ

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