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2020年のオリックス、借金23最下位も実は弱くなかった? 伸びしろを感じるワケ【記録で振り返り】 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2021/01/06 11:02

2020年のオリックス、借金23最下位も実は弱くなかった? 伸びしろを感じるワケ【記録で振り返り】<Number Web> photograph by JIJI PRESS

初の首位打者に輝いた吉田正尚。山本由伸とともに投打の軸はいるだけに、チームの底上げさえされれば……

 吉田正の前後を固めるような若手が出てくれば、吉田へのプレッシャーも軽減される。前述の杉本、大下をはじめ、頓宮裕真、中川圭太など候補はいるのだ。ここから一本立ちする選手が欲しいところだ。

 なお、佐野皓大は投手から外野手に転向、昨年は20盗塁4盗塁死と抜群の足を見せた。周東佑京ばりの「切り込み隊長」に成長すれば、これもオリックスの売りになるだろう。

先発陣はリーグ上位クラス、救援陣は?

 一方で先発投手陣は、すでに現段階でリーグでも上位ではないだろうか。

<主要な先発投手陣の成績>
山本由伸 18試8勝4敗126.2回 率2.20
田嶋大樹 20試4勝6敗122.1回 率4.05
アルバース 16試4勝8敗89回 率3.94
山崎福也 15試5勝5敗84回 率4.50
山岡泰輔 12試4勝5敗69.1回 率2.60
張奕 13試2勝4敗48回 率4.31
榊原翼 9試1勝4敗43.1回 率5.19

 規定投球回数以上が2人、80イニング以上が4人。勝ち星こそ上がっていないが、先発投手陣はAクラスだろう。

 山本由伸は昨年、リーグ4位の126.2回を投げたが、投手の酷使度を示すPAP(Pitcher Abuse Point)は50276、黄信号とされる10万の半分の数値だった。肩肘の負担はそれほど大きくなかったと言えよう。

 山本由伸は来季23歳、田嶋は25歳、山崎は29歳、山岡は26歳と日本人先発は全員が若く、伸びしろがあるのも好材料だ。陽岱鋼のいとこの張奕は2019年のプレミア12で、台湾のエースとして活躍しており。彼にも期待できる。打線とうまくかみ合えば、十分に戦えるだろう。

 逆に救援陣は問題ありか。

<主要な救援投手の成績>
ディクソン 39試0勝4敗16SV 5HD 35.2回 率3.28
漆原大晟 22試0勝0敗2SV 5HD 23.2回 率3.42
鈴木優 13試1勝3敗1SV 2HD 38.2回 率6.52
吉田一将 23試1勝1敗1SV 0HD 35.1回 率4.08
ヒギンス 41試3勝3敗0SV 19HD 41.1回 率2.40
山田修義 48試4勝5敗0SV 18HD 39.1回 率3.89
比嘉幹貴 20試0勝0敗0SV 9HD 12.2回 率0.71
吉田凌 35試2勝2敗0SV 7HD 29回 率2.17

 ここ2年、ディクソンがクローザーを務めたが、ゆったりとしたマウンドさばきは先発のものであり、どうにもすわりが悪い印象だった。

ディクソン先発でクローザーをどうする?

 中嶋監督はディクソンを先発で起用する意向のようだ。これによりローテーションは強化されるだろうが、クローザーはイチから探すことになる。ベテランの比嘉をクローザーに回すのは難しそうだが、昨年の新人、漆原大晟は勢いのある速球を投げる。吉田凌にも期待が持てそうだ。

 実績十分の増井浩俊も含めて、クローザーの固定が急務になるはずだ。

 オリックスは2014年にCSに出場して以来、ポストシーズンとは無縁だ。日本シリーズ出場はイチローがいた1996年まで遡る。負けることに慣れてしまった印象が強い。

 中嶋聡監督にとって、最大の敵は「負け癖」ではないだろうか。それを払しょくできるか、興味深く見守りたい。

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