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バレー界のイニエスタ? 世界的名手クビアクが語ったVリーグの魅力と日本育成へのアドバイス 

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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posted2020/10/27 17:01

バレー界のイニエスタ? 世界的名手クビアクが語ったVリーグの魅力と日本育成へのアドバイス<Number Web> photograph by Yuko Tanaka

今季でVリーグ5シーズン目となったクビアク。世界的プレーヤーが日本でプレーする意味は大きい

クビアクが変えた日本人選手の意識

 これまでもJTサンダーズ広島やウルフドッグス名古屋が豊富な経験を持つ外国人指導者を招聘し、リーグ制覇を遂げたことで戦術や戦略面で大きな進化を遂げてきた。しかし、クビアクがVリーグに来る前と来た後では、間違いなく日本のバレーボールは変わった。

 大きく影響を与えたのは、選手個々の技術であり、意識だ。クビアクがVリーグのコートに立つようになってから、これまで会場がどよめいていたプレーはごく当たり前に行われるようになった。

 勝負所では鋭く、そして緩急を織り交ぜ、ターゲットを的確に狙うサーブ。相手ブロックやディフェンスを見ながら強打や軟打と巧みな技を見せつけるスパイク。さらに象徴的なのは決して派手ではなく、数字にも残らないプレーの数々だ。

 たとえば、相手からのチャンスボールをセッターがレシーブした後、アウトサイドヒッターの自らが打つと見せかけてジャンプトスをしたかと思えば、次は2本目をトスすると見せて相手ブロッカーの警戒を緩め、よりマークの少ないフリーな状態で打つ。何を出してくるかわからないクビアクに対する備えは、相手ばかりでなく自チームの意識やバレーをも変えた。そう話すのは同じパナソニックでプレーする山内晶大だ。

「基本的に常に攻撃へ入る準備をしていても、セッターが1本目をレシーブした後は、どこかで『普通はこれだけ離れたところから二段トスは来ない』と思う時もあったんです。だけどクビアクに、その“普通”は通じない。“え、そこから?”という場所からでもクイックのトスを上げて来るから、常に打つ気で入らないとめちゃくちゃ怒られる。当たり前、の認識が一気に変化しました」

「間違いなく、レベルは上がっている」

 日本のバレーボールに多大な影響を与えるクビアク自身は、Vリーグをどう見ているのか。

「間違いなく、毎年レベルは上がっています。新しい選手、若い選手がコートに入ることも増え、インパクトのある選手も多くいる。日本人のいい選手もいっぱいいて、ポテンシャルも高い。いい意味で日本のリーグ、バレーボールは変わっています」

 さらに日本人だけでなく各チームの外国人選手へと目を向ければ、クビアクだけでなく前述のクレクや2012年ロンドン五輪を制したロシア代表ドミトリー・ムセルスキーがサントリーサンバーズに在籍。ジェイテクトSTINGSにはかつてパナソニックでプレーし、2016年リオデジャネイロ五輪を制したブラジル代表フェリペ・フォンテレスが加わり、今季のVリーグには世界一経験者が4人揃っている。言うならば、イニエスタのような選手が何人もいる。自ずとリーグ自体のレベルも引き上がるのは確かだ。

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ミハウ・クビアク
パナソニックパンサーズ

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