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コロナと気候変動とトレランの関係。石川弘樹が今も山を整え続ける理由。 

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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photograph byHiroki Ishikawa

posted2020/09/02 07:00

コロナと気候変動とトレランの関係。石川弘樹が今も山を整え続ける理由。<Number Web> photograph by Hiroki Ishikawa

石川弘樹はランナーであると同時に、トレイルの整備にも力を入れている。その両立はトレランにとって重要な要素だ。

ボランティア活動を参加条件にするレースも?

「これからのトレイルランナーは、ただレースを走るだけじゃなく、トレイルの整備などに携わりながらというのが大事になってくると思います」

 アメリカでは、例えば100マイルのレースに参加する場合、8時間以上のトレイルワークをした証明書を提出してエントリーが認められるシステムになっている。トレイルワークというのはトレイルの整備、補修にかかわるボランティア作業のことだ。

 日本でも、そういうことを始めているところもあるというが、そういう手段はトレイルランニングという競技の特性を考えるとアリのような気がする。

「アメリカのようなシステムは、ランナーにトレイル整備の意識を喚起させるきっかけにはすごくいいと思います。でも、本来であればトレイルを走るランナーがトレイルが維持されている背景を理解して、レースに参加するだけでなく、自ら率先して整備活動に足を運んで欲しい。大会側も大会前後の整備活動にも力を入れて各地のトレイルの環境を整える役割を担っていってもらいたいですね」

先行きが見えなくても、山に入る。

 最近は、石川の行動に共鳴し、多くの人がボランティアでトレイルの整備を手伝ってくれるようになった。そうした行動が多くの地域で広がりを見せれば山の道は安全に使用できるようになり、より多くのトレイルランナーや登山者が楽しめるようになる。

「僕は、今年45歳になりますが、20年前にトレイルランニングの普及を始めて、僕と同世代で走ってきた人たちが今も走ることはもちろんですが、裏でサポートする意識に変わってきています。そういう人たちの意識を各地域で生かしつつ、大会の主催側と連携してトレイルの整備、維持するためのキッカケ作りをしていく。実際に作業することで、意外と面白いと思ってくれる人が増えるかもしれないですし、トレイルのボランティアのマインドが育っていくと思うので」

 トレイルランナーだけではなく、登山者、山好き、自然好きの人などトレイルの整備に参加したい、興味がある人はボランティアで参加してほしいと石川は言う。ちなみにトレイルの整備は、初心者だからといって躊躇する必要はない。チェーンソーや草刈り機で切った草木を除けたり、熊手でかき集めたりするのは初心者でも可能な仕事である。

 長野県信濃町でのトレイル整備は9月末からの予定だ。

 コロナ禍の影響で今後のレースの先行きが見えない中、それでも石川はいつも通りに山に入り、トレイルの整備をつづけていく。

 トレイル(道)は生きている、からだ。

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