甲子園にふさわしいチームになれた。

　県大会で磐城、東北大会では鶴岡東と仙台育英と、奇しくも甲子園の交流試合に出場する3校を倒しての戴冠だった。

「縁あって甲子園で試合をする東北の3チームと対戦させていただいて、聖光学院が成長した姿を見せられて幸せでした」

　斎藤は満足そうに笑みを浮かべていた。

　昨秋に0勝だったチームが福島と東北で8勝し、夏を締めくくった。

　周囲が夏の王者に問う。

　――「心のなかの甲子園」はどこにあったのだろうか？

　それはきっと、福島県“14連覇”や東北大会優勝といった、目に見えるものだけではない。むしろ、秋の屈辱から這い上がり、勝っても甲子園がないとわかりながらもやり切ったチームの歩みにこそ、「心のなかの甲子園」があったのではないだろうか。

　内山主将が自分たちのチームを誇る。

「甲子園がなくても、甲子園にふさわしいチームになれたことが嬉しいんです」

「取材してくれて、ありがとうございました」

　東北大会が閉幕し、取材を終える頃には、すっかり陽が暮れていた。バスに乗り込もうとする内山に取材に応じてくれたことへの感謝を述べると、踵を返し「この取材は、新聞ですか？」と聞かれた。

　いや、ウェブなんだけどねと、媒体名を告げると、「あ！　知ってます」と声を張り、嬉しそうに頭を下げてくれた。

「最後まで自分たちを取材してくれて、本当にありがとうございました！」

　これから間違いなく、聖光学院の新たな歴史が始まるな――。

　主将の大きな背中を見送りながら、そう思った。