甲子園の舞台だからこそ成長できる。

　2回以降、調子を取り戻した川瀬はストレートを主体に押していった。ピンチを作ることもあったが、最後まで粘り、得点を与えなかった。

　6回に相手のミスに乗じて1点を返すと、試合のペースは大分商の方へ傾いていった。川瀬の粘りのピッチングがチームを前に向かせたのはいうまでもない。

　甲子園の舞台だからこそ成長できると語ったのは、渡辺正雄監督だった。

「（甲子園）独特の雰囲気を感じましたね。それが初回の失点につながったと思いますけど、チーム自体がずっと成長がなければ、あのままずるずるといっていたと思う。そこで成長が見れたのはよかった。川瀬はゲームを作ってくれた」

「悩みや悔しさを乗り越えて力を伸ばしてくれる」

　もともとエース川瀬の存在が際立つチームだった。

　エースと主将を兼務する大黒柱。この日の試合前には、相手の花咲徳栄の主将・井上朋也とともに選手宣誓もこなしている。

“ワンマンチーム”と言ってもよかったが、川瀬やチームが1つになれたのは、甲子園という舞台を目指すからこそ、得られた成長だった。

　渡辺監督は続ける。

「川瀬は自分1人でやっていくというところから、キャプテンになって、仲間の大切さを学んで成長してくれました。

（甲子園という舞台は）子どもたちにいろんな力を発揮させたり、悩みや悔しさを乗り越えて力を伸ばしてくれる。思い描いていた通りの舞台だと思う」

　この試合の重みをどう捉えるかは開幕前から気になっていたことだった。

「2020年甲子園高校野球交流試合」と銘打たれた今大会は、球児の夢を叶えるものだ。

　しかし、勝っても負けても先につながらないという性質は、今までの大会と一味も二味も毛色は異なるものだった。

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