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山崎武司も「ちょっとこれはいいぞ」。
中日・岡林勇希は未来を担う存在に? 

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栗田シメイ

栗田シメイShimei Kurita

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photograph byKyodo News

posted2020/08/03 11:00

山崎武司も「ちょっとこれはいいぞ」。中日・岡林勇希は未来を担う存在に?<Number Web> photograph by Kyodo News

30日、広島戦でプロは初安打を放った岡林勇希。山本昌、井端ら中日のドラフト5位は後に主力となった選手が多い。

野手の練習はほとんどしていない。

 主戦投手としてマウンドに上がり、登板機会がない試合では両翼の守備につき打者としても主軸を担った。50mの5.8秒の俊足、遠投で120mを投げる強肩もさることながら、打っては高校通算21本塁打と、2年時から4番を任された。プロからも早い段階で高い評価受けていたという。

 それでも盗塁や外野手としての守備練習はおろか、打撃練習もほとんど行ってこなかった。戸田は岡林に盗塁のサインを出したことはなく、外野以外の守備につかせたこともない。

 それは怪我のリスクを減らすほか、内野で野手投げを覚えることで投球への悪影響が及ぶことも考慮した上でのこと。投手として上を目指したいという岡林の意向もあったのだろう。

「ボールを呼び込み、自分のポイントで打つということは、教えようと思っても教えられるものではない。岡林は当時から打席でのタイミングの取り方は上手かったですね。打者としての本質は率を残せるアベレージヒッター。高校レベルではどんなボールにも対応していたし、まさにセンスだけでやっていた印象ですが、それでも平然と打っちゃう。

 特にインコース打ちは抜群で、普通はファールにしかならないような厳しいインハイの球なんかも、軽々とホームランにしていましたよ。3年生に上がる頃には、県内では岡林に対してインコースの球を投げてくる投手はいなくて、アウトコース一辺倒。あの体付近のボールの捌き方は天性のもので、プロへ進んでも木製バットの壁とインコース攻めへの対応に不安はなかったですね」

「刺激」を楽しめるプロ向きの性格。

 だが、そんな才能を持ってしても甲子園の舞台には辿り着けなかった。2年夏には県大会ベスト16、3年夏は準決勝で敗退。何事もうまくこなすスマートさの一方で、最後の夏、海星高校に敗れた後に岡林がみせた表情が戸田の印象に残っている。

「あいつは必要なこと、必要じゃないことを理解してしっかり線引きができるんです。自分が必要ないと思った練習ではうまくサボってましたから(笑)。公式戦なんかでもチーフスカウトが来ている試合では、必ずホームランを打っていました。そういう要領の良さと器用さは常に感じていた。

 ただ、最後の試合は高校3年間で一番ダメくらいの出来で、自分が打たれた結果、チームも敗れてしまった。あの時ほど悔しそうな岡林の表情は記憶にないですね。これは結果論ですが、よりレベルの高い高校でがむしゃらにやっていれば、もっともっと伸びていたかもしれません。全員がうまい今のような環境の方が岡林にとって合ってますよ。そこで折れるのではなく、刺激と捉えて楽しめるプロ向きの性格ですから」

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