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CL処分撤回でマンCの逆襲が始まる。
大型補強に“後継10番”覚醒の予感。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2020/07/19 11:50

CL処分撤回でマンCの逆襲が始まる。大型補強に“後継10番”覚醒の予感。<Number Web> photograph by Getty Images

グアルディオラ監督が目をかけるフォデン。留任となればさらにその潜在能力が研ぎ澄まされるはずだ。

CLを戦えなければ大物からそっぽ。

 ペップ・グアルディオラ監督は「何か言いたいことがあるのなら、私はここにいる」と語っている。『スカイ・スポーツ・ニュース』でそう呼びかけたのは、マンチェスター・ユナイテッドとリバプールで指揮を執る、ジョゼ・モウリーニョとユルゲン・クロップに対してだ。

 これは前者が「恥ずべき裁決」、後者が「サッカーにとって悪しき出来事」と揃って処分撤回に否定的だったことへの反論である。

 仮にCASがUEFAの処分を正当と判断していれば、グアルディオラは“ここにはいない”事態となっていたかもしれない。本人はCL出場を禁じられたとしても現契約が満了する来季、シティで指揮を執るとのスタンスを貫いてきた。

 ただ、その翌年も許されない状況が現実となっていたとしたら? 

 チームを見れば、10年以上最終ラインを支えたバンサン・コンパニが移籍して、長らく司令塔を務めたダビド・シルバも今季限りで去ることが決まっている。やはり30代の主砲セルヒオ・アグエロも祖国アルゼンチンで最後の一花を咲かそうとしている。

 CLのないシティでの日々を「1年は我慢できても、2年なら考える」と言っていたのは、29歳と年齢的なピークにあるケビン・デブライネだ。また、25歳で野心旺盛なラヒーム・スターリングも同じ心境だったに違いない。彼らワールドクラスと称されるMFやFWの穴埋めはただでさえ困難なうえ、CLを戦えないシーズンが続くとなれば、大物にはそっぽを向かれる可能性が高い。

270億円もの金銭ダメージを回避。

 プレミアという舞台に惹かれる即戦力候補がいたとしても、CASにもFFP違反があったとみなされていれば、アブダビ王族の財力を後ろ盾とするシティといえども、移籍市場で積極的に振る舞うことは難しかっただろう。

 8強入りした昨季CL出場に伴う収入は約9300万ポンド(約126億円)。当面は無観客での試合開催となる可能性を考慮し、1000万ポンド(約13.5億円)ほどのCL戦入場料収入を引いたとしても、UEFAに要求された2700万ポンド(約36.5億円)の罰金を含めれば、CL出場禁止の2年間で2億ポンド(約270億円)近くもの金銭的ダメージが生じていた。

 加えてシティは、2013~16年度の会計に関する国内版FFP規則違反も調査中で、欧州での控訴審の成り行きを注目していたプレミアリーグからも罰金やポイント剥奪といった制裁を受けていたかもしれない。

 だがCASで事実上の無罪を認められたシティが、国内トップリーグから厳罰を受けるケースは、もはやないだろう。

【次ページ】 夏の狙いはクリバリー、トーレス。

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