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バレットにマピンピ、レイドローも。
ラグビーW杯が世界に広めた日本愛。 

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戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byAFLO

posted2020/07/09 20:00

バレットにマピンピ、レイドローも。ラグビーW杯が世界に広めた日本愛。<Number Web> photograph by AFLO

ボーデン・バレットは紛れもなく世界最高クラスのスタンドオフである。彼らが日本をプレーの場として選ぶ時代になったのだ。

W杯期間に日本という国を楽しんだ。

 NTTコム入りが唯一の選択肢でないなかで、レイドローはなぜ日本行きを決断したのか。クラブを通じてこんなコメントを寄せている。

「'16年に日本で行われた代表試合、そして去年のW杯では日本の素晴らしい文化を経験でき、素晴らしいファンの皆様にお会いすることができました。日本を訪れるたびに素晴らしいおもてなしの心で歓迎していただき、これからこの素晴らしい国『日本』に住み、シャイニングアークスの一員になれることを心待ちにしています」

 文字を読むだけでモゾモゾとしてくるが、レイドローの肌触りは例外的ではない。パナソニック入りしたパークスは「ラグビーW杯の際、私は日本での時間を楽しみました、今後来日してからは妻と娘と一緒に日本での生活を経験できることを、本当に楽しみにしています」と、沸き立つような気持ちを表わした。

 南アフリカ国内でプレーしてきたマピンピには、ヨーロッパのクラブからも獲得の打診があったと言われる。それでも彼は、もう一度日本へ来ることを選んだ。「昨年のW杯でのとても素晴らしい思い出」が、「レッドハリケーンズでもより多くの素晴らしい経験と思い出が残せるだろう」という考えに結びついたのだった。

これこそがW杯のレガシーなのだ。

 B・バレットもこう話している。来日を楽しみにしている彼のワクワクとした気持ちが、文字から浮かび上がってくるようだ。

「'19年のラグビーW杯の期間、日本で過ごした時間は大好きな時間であり、そのときの経験が、ぜひまた日本へ戻りたいと思うきっかけになりました」

 ラグビーW杯に熱狂した記憶は、多くの日本人にとって忘却の彼方へ消え去ってしまった。W杯後のトップリーグに持ち込まれた熱は、新型コロナウイルスの感染拡大によって強制的に鎮火された。スポーツのある日常が少しずつ戻っているものの、トップリーグの新シーズンの足音はまだ遠い。

 W杯はもちろんラグビーという単語さえ日常から抜け落ちていくなかで、インターナショナルレベルのスター選手はW杯の記憶を大切に温めていた。日本で過ごした時間を懐かしむだけでなく、次なる活躍の舞台としてトップリーグを指名した。

 彼らが日本を選んだことは、W杯開催のレガシー(遺産)であり、私たちにとっての誇りだ。'21年1月予定の新シーズン開幕までに、さらなるスターの加入があるかもしれない。

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