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マンCの通常運転、黙祷、BLM運動。
悲劇も差別も乗り越えプレミア再開。

posted2020/06/21 11:50

 
マンCの通常運転、黙祷、BLM運動。悲劇も差別も乗り越えプレミア再開。<Number Web> photograph by Getty Images

「Black Lives Matter」を象徴する片膝付きポーズを取るアーセナルのオーバメヤン。世界の今を象徴する1枚だ。

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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 サッカーはサッカー。そして、プレミアリーグはプレミアリーグ。6月17日に訪れた今季の再開は、イングランド庶民が抱いていた「戻って来た」との期待を裏切らなかった。

 100日ぶりのキックオフが実現したのは、0-0だったアストンビラ対シェフィールド・ユナイテッド戦。続くマンチェスター・シティ対アーセナルは3-0というスコアだった。

 再開初戦は、アストンビラがサプライズながらもトップ6候補のシェフィールド相手に、残留争いで必死のチームらしくホームで頑張り、2試合目は上位対決ながらマンCが対アーセナル7連勝となる順当勝ち。表面的には「相変わらず」のように思える。

 だが、仮にそうだったとしても、それが「安心できる」と理解されるのが、サッカーのある日常に飢えていた母国民の心境だ。

感染死亡者は200名超、人種差別デモも。

 英国内はプレミア再開の前々日から街中のショップも営業を始めていたが、依然としてコロナ禍の生活が続く。ソーシャル・ディスタンスを前提として、レストランやパブは最短でも7月初旬まで営業再開が許されていない。

 4万人台のウイルス感染死亡者には、再開前日の233名も新たに加わっていた。ロンドン市内中心部で行われた人種差別抗議デモで100名を超す逮捕者が出る暴動騒ぎが起こったのも、再開の4日前。悲しみと怒りが渦巻く異常な日常に戻ってきたプレミアは、有り難いほどに「いつもと同じ」だった。

『スカイ・スポーツ』の生中継2試合をテレビ観戦しながら、昼過ぎと夕刻キックオフの2試合を観る土曜日の気分になった国民も多かったに違いない。

 6月の英国は夜10時頃まで暗くならない。午後6時開始のビラ・パークでの1試合目はもちろん、午後8時過ぎに始まったエティハド・スタジアムでの2試合目も窓の外はまだ明るかった。

 西ロンドンにある自宅でテレビ中継を観る“テレワーク”を決め込んだ筆者は、番組が始まった午後4時半からソファに腰を下ろしてワクワクしていた。

 画面の向こうから、ビラ・パークでの入場前に流れる「ハイ・ホー・シルバー・ライニング」(ジェフ・ベックによる1960年代のヒット曲)が聞こえてくると、リズムに合わせて体が自然と動いてしまい、膝の上で寝ていた愛犬に嫌がられてしまった。早くも手に汗をかいていることがバレて、隣に座る妻には笑われた。

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