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ロナウド「4度目の正直」で初制覇。
EURO2016に刻んだリーダーの素質。
text by
豊福晋Shin Toyofuku
photograph byGetty Images
posted2020/06/22 11:00
EURO初制覇を達成したロナウド(右/2016年)。結果を出すことで引っ張ってきたロナウドだが、この大会では仲間に歩み寄る姿勢が目立った。
決勝弾エデルにかけた言葉。
12年前の自国開催のEUROの記憶が、ロナウドの頭にはあったのかもしれない。あの時、ロナウドはまさに現在のレナトとおなじ立ち位置だった。ルイコスタやフィーゴら、当時のチームを率いていた選手たちにかけられた言葉が忘れられないと彼は言う。そしてそんな役割を、今ではロナウドがこなしている。
エデルが決勝点を決める数分前、延長前半と後半のインターバルに、ロナウドは彼のところへいき耳に口を近づけ、何かを囁いた。エデルがその時の言葉を明かす。
「ロナウドが、お前が決勝点を決める、と言ってくれたんだ。その言葉は僕に自信をくれた」
エデルだけではない。ロナウドはピッチに座り、マッサージを受ける選手たちのところへ足を引きずり歩き、手を叩き、ひとりひとりに声をかけた。チームを外から支えようとするエースの姿がそこにはあった。
「サッカーではすべてが可能」
今大会はロナウドの大会ではなかった。
史上初となる、EURO4大会連続ゴールを決めた。準決勝のウェールズ戦で決めた得点でEURO通算9得点とし、歴代1位のミシェル・プラティニに並んだ。記録は伸ばしたが、彼がピッチの上で輝いた試合よりも、コンディション不良から不甲斐なさを感じた試合の方が多かった。
決勝戦、エース不在にもかかわらず、チームは自信をなくすことはなかった。大会を通してチームが成長した証だ。
EURO2004でのポルトガルはフィーゴやルイコスタ、伸び盛りのデコやリカルド・カルバーリョ、そして若きロナウドがいるタレント軍団だった。しかし彼らはホームでの決勝でギリシャに敗れ、涙を流した。それから12年後、フランスの地でポルトガルは優勝し、ロナウドはついにカップを掲げた。
「僕らは長い間挑戦してきた。誰もこのポルトガルが優勝できるとは信じていなかった。キャプテンとして、サッカーではすべてが可能だってことを、チームメイトに伝えたかった」
決勝後にロナウドは語った。
不可能と言われたタイトル獲得に挑み続けた12年間。その歳月の中でポルトガルも、ロナウド自身も変わっていった。ポルトガルの戴冠は、そんな長き歩みの結実でもあった。
(Number906号『[12年越し、涙の初戴冠]クリスティアーノ・ロナウド「4度目の正直」』より)