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岡崎慎司がリーグ再開へ思うこと。
「点を獲ってこそ。守りに入らない」 

text by

寺野典子

寺野典子Noriko Terano

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photograph byAFLO

posted2020/06/12 18:00

岡崎慎司がリーグ再開へ思うこと。「点を獲ってこそ。守りに入らない」<Number Web> photograph by AFLO

岡崎慎司は迷いながら、確実にその場所その場所での自分の役目を見つけてキャリアを積み重ねてきた。スペインでも自分の居場所を見つけるはずだ.

チームに溶け込めたと感じた瞬間。

 監督からの期待は大きかったが、スペインのサッカー、ウエスカのスタイルにシーズン途中加入で馴染むのは簡単ではなかった。ゴールというストライカーのエゴとチームのサッカーとの葛藤は、ドイツやイングランド時代同様に岡崎を悩ませ続けた。

 試合に出場できずベンチに座る時間が続き、Bチームの若い選手たちと練習を共にするうちに、岡崎はいつの間にか自分が抱え込んでいた気負いに気づいた。

「ある試合で途中出場を命じられて、ウォーミングアップもそこそこに慌てて監督のもとへ行ったんです。そんな僕を見ながら、チームメイトがくすくすと笑っている。『慎司、そのまま行くのか?』とツッコまれて自分の足元を見たら、レガースもつけず、ソックスも履かずにピッチへ出ようとしていたんです。でもそんなふうに言われて、やっとチームの輪に入れたような安堵感もありました」

 しかしチームに溶け込み、徐々に出場機会が増えても、悩みが完全に消えたわけではない。自分のゴールのためにリスクを負ってプレーするのか、リスクを回避するためにパスを選ぶのか。立場の不安定さだけでなく、調和性や協調性という特長が日本人である自分の評価のひとつだと理解しているからこそ迷いは生じた。

「あのとき、こうすればよかった」と後悔や反省を繰り返しながら、少しずつウエスカでの「あるべき姿」を模索し、ゴールを重ねての4試合4得点。1部昇格争い圏内に踏みとどまりながらも、なかなかスッキリ勝ちきれないウエスカに光を見せる活躍ができた。

点を獲ることで信頼され、またチャンスが来る。

 そして、リーグ再開へ向けて岡崎も動き出している。

「チーム練習が再開しても、当初はグループ毎のトレーニングでした。チーム練習が始まったのは6月に入ってから。監督は、ダイナミックにゴールを奪いに行くスタイルをチームに持ち込むことを僕に期待してくれているけれど、今のチームはショートパスを繋ぎながら崩していくスタイルがベース。遅効になりすぎて決めきれず、逆に相手チームのカウンターに苦しめられることもあります。だから僕自身は、ゴール前で自分が決められるポイントを常に意識することが重要だと思っています。

 やっぱり点を獲っていたからこそ、今はそういうことをイメージする余裕があります。いいタイミングでパスが出てくることも増えたし、チームメイトからの信頼も感じます。これは自分が積み重ね、掴み取った実績です。

 ここで大切なのは、守りに入らないという姿勢。つい守りに入ってしまって苦労した過去があるので、チームの中でやるべきことを意識しながらも、ゴールに向かっていきたい」

【次ページ】 再開した古巣ブンデスを見て思うこと。

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