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西武に芽生える明確な競争意識。
三軍制導入は常勝軍団への序章。 

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市川忍

市川忍Shinobu Ichikawa

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posted2020/05/28 11:50

西武に芽生える明確な競争意識。三軍制導入は常勝軍団への序章。<Number Web> photograph by Kyodo News

三軍統括コーチを務める田邊徳雄は、栗山巧や中村剛也を一軍に送り込んだ手腕の持ち主。西武では4年ぶりの現場復帰となる(写真は2016年監督時代)

若手育成に定評ある青木コーチ。

 一方、三軍の投手陣を任されるのは2000年から'06年まで西武に在籍した青木勇人コーチだ。青木コーチは広島で引退したあとコーチとなり、広島東洋カープでも三軍コーチとして若手の育成に力を注いできた。その手腕を買われて、ライオンズに復帰した。

「現在のライオンズは、もちろんパ・リーグで連覇している、いいチームです。ただし若い選手が多いですね。その若手の底上げをしてほしいと言われてコーチ就任のお話をいただきました。去年の秋のキャンプから見ていますが、将来有望な選手が多い印象です」

 広島の三軍コーチ時代に培った「体力をつける」方法を選手には伝えていきたいと話す。

「僕自身が現役時代、故障が多く自分の持っている力を発揮できないことが多かった。選手に同じ思いをしてほしくないという一心で取り組んでいます。まずは技術よりも、技術を覚えるための体作りを念頭に置いています」

「長い目で見た育成」

 全体の練習時間を100%とすると、その中の60~70%を体作りのための基礎練習に割り当てている。しかも、目標設定も驚くほど遠い。

「三軍の投手でいえば、シーズン中ではなく、秋のフェニックス・リーグで投げることに照準を合わせるくらいのつもりでいます。それくらい、時間をかけるイメージですね。『フェニックス・リーグで周りを驚かせるようなボールを投げよう』ということを広島時代は目指していました」

 一見、遠く見える目標だが、それが「長い目で見た育成」につながるという。

「広島にいたときは、ほぼ1年間、キャンプ中のようなメニューで練習したこともあって、それはライオンズでも生かせると思っています。当然、そればかりでは選手も目標を見据えづらいと思いますので、何度かは二軍の試合にも出場するのですが、まずは〇月〇日に投げるという目標を設定し、その後、その中でできたこと、できなかったことの洗い出しをします。できなかったのは何かが足りないからです。その課題を見つけて鍛えていこうということを話しました」

 課題は選手によってさまざまで、先発タイプであれば長いイニングスを投げるための体力や技術、中継ぎタイプであればウィニングショットの習得など、選手ごとにそれぞれの目標を掲げる。その上で、秋の教育リーグ(フェニックス・リーグ)を最終目標として育成する。目先の結果に惑わされず、選手が自分の目標を貫ける環境を作るのが目的だ。

【次ページ】 成果が見え始めた“2m”右腕。

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