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バルセロナに球蹴りが戻ってきた。
親子の路地裏フットボールの幸せ。 

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中島大介

中島大介Daisuke Nakashima

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photograph byDaisuke Nakashima

posted2020/05/21 07:00

バルセロナに球蹴りが戻ってきた。親子の路地裏フットボールの幸せ。<Number Web> photograph by Daisuke Nakashima

長い外出禁止から明けて、ボールと戯れる子どもたち。バルセロナの街中にフットボールのある日常は少しずつ戻っている。

移住前に描いたサッカー風景。

 スペインに移住する前、間抜けなことに、全てのスペイン人がサッカー好きで、そこかしこでストリートサッカーをしていると想像していた。

 現実には「サッカーは好きじゃない」と断言する人も多いし、交通量の多い街中で球蹴りをしているシーンには遭遇できない。現代の子供達はクラブチームに属し、人工芝のグラウンドでボールを追う。

 思いがけず、コロナ禍の影響で思い描いていたスペインのサッカー風景に触れることができた。

 グラシアス、お礼を伝えてその場を去る。笑い声とボールの弾む音が背中越しに聞こえる。仲間に入れて欲しくなる。写真屋さんが再開したらプリントしてプレゼントしよう。

 でも、街が動き出した頃にはもうこの場所でボールを蹴る彼らには出会えないのかもしれない。写真を届けられないのは残念だけれど、それぞれの日常に戻っていく、それで良い。

サッカーの無い世界は味気ない。

 スペインにおけるコロナウイルスの被害は大きく(5月20日現在の死亡者は2万7000人以上)、今も苦しんでいる方は多い。医療従事者や、様々な現場に立ち続けてくれている方達、貴い時間を犠牲にして家で過ごしている子供達のことを考えると、“No Football, No Life”なんてことを気軽に口には出せない。

 それでもサッカーの無い世界は味気ない。自分がプレーできないことも、TVで見れないことも、1つの試合をあーだこーだと誰かと話せないことも、仕事としてピッチ脇に居れないことも。その1つ1つが大きなストレスとなって、世界から楽しみを奪っていく。

 寒い冬の日に、夏のバケーションを焦がれるのと同じくらい、今、サッカーのある世界を待ち望んでいる。

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