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モンベルが不織布で防護服を縫製。
辰野会長「2300セットつくります」

posted2020/04/28 18:00

 
モンベルが不織布で防護服を縫製。辰野会長「2300セットつくります」<Number Web> photograph by Montbell

医療用の防護服をミシンで製作する、アウトドアメーカー・モンベルの辰野勇会長。

text by

千葉弓子

千葉弓子Yumiko Chiba

PROFILE

photograph by

Montbell

「起業して45年。これまで山も谷も経験してきたけれど、まさかこんな世界が訪れるとは思ってもいなかったよ」

 登山家でもあるアウトドアメーカー、モンベル会長の辰野勇はこうつぶやいた。

 辰野は21歳の頃、グランド・ジョラス北壁、マッターホルン北壁とともに困難な3大ルートとして知られるアイガー北壁登攀に、当時の世界最年少で成功した。

 そして28歳のとき、大阪の雑居ビルの一室でモンベルを立ち上げる。テントや寝袋などのヒット商品を生み出し、グローバルアウトドアメーカーの先駆けとして、国内シーンを牽引してきた。現在ではグループ全体で850億円を売り上げるまでに成長している。

 山でも経営でも数多くの修羅場をくぐってきたであろう辰野だが、ここ2カ月の世界の変わりようはまったく未知の経験だった。

 だが、辰野の動きは早かった。

 モンベルでは、7都道府県に緊急事態宣言が出た4月初旬には、縫製部のある石川県でTシャツなどに用いられる速乾性機能素材「ウィックロン」を使った一般向けマスクの製造を開始。

 そして4月下旬、逼迫するコロナ治療の医療現場を支援するために、寝袋カバーの素材を使って防護服の製作に乗り出したのだ。

自らミシンを踏んでプロトタイプを作成。

 防護服の製作のきっかけは、辰野のもとに届いた医師からの声だという。

「4月17日に、通院していた大阪の住友病院の前医長の松澤佑次先生から『防護服が足りなくて困窮している』というSOSが届いたんですよ」

 すぐに病院に向かい、感染制御部の林三千雄診療主任部長から現場のニーズを事細かく聞き、その日のうちに辰野氏自らミシンをかけて、プロトタイプを仕上げた。

【次ページ】 素材は寝袋カバーのための「タイベック」。

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