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ライガー、WWE殿堂入りの理由とは。
かつて馬場とカブキは辞退した!? 

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堀江ガンツ

堀江ガンツGantz Horie

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photograph byL/Naoya Sanuki R/AFLO

posted2020/03/19 20:30

ライガー、WWE殿堂入りの理由とは。かつて馬場とカブキは辞退した!?<Number Web> photograph by L/Naoya Sanuki R/AFLO

WWEの殿堂入りを果たした獣神サンダー・ライガー。過去にはジャイアント馬場らも殿堂入りの候補だっとか。

“幻のWWE殿堂者”とは?

 さて、2010年の猪木、2015年の藤波、そして今回、2020年のライガーと、これまで5年おきに日本人レスラーがWWE殿堂入りをはたしているが、これに続く選手は今後出てくるだろうか。

 アメリカでも活躍した存命のレスラーということで考えれば、'80年代後半から'90年代にかけてNWA、WCWで活躍したグレート・ムタこと武藤敬司。'80年代にヒールとしてWWEのトップで活躍、MSGで何度もメインイベントを務めたキラー・カーン。'80年代前半にダラス地区でブレイクし、日本人怪奇派レスラーの先がけとなったザ・グレート・カブキ、さらに'80年代後半にWWF女子タッグ王者となり、女子選手として初めてWWEのメインを務めたJBエンジェルス(山崎五紀&立野記代)などが候補として考えられる。

 その中でザ・グレート・カブキは、“幻のWWE殿堂者”だったことを以前、本人から聞いている。

「店が忙しいからダメだ」と断った。

 2016年に「レッスルマニア32」がテキサス州ダラスのAT&Tスタジアムで開催された際、かつてダラス地区で活躍したファビラス・フリーバーズ(テリー・ゴディ、マイケル・ヘイズ、バディ・ロバーツ、ジム・ガービン)が殿堂入り。その時、同時期にダラスで大ブレイクしたカブキにも、WWEから殿堂入りの打診が来たというのだ。しかし、カブキはそれを辞退。その理由を次のように語っている。

「あの時、以前WWEにいたTAJIRIを経由して、自分にもWWEから殿堂入りの話があったんですよ。『ダラスまで来てくれ』って。でも俺は『店(経営する居酒屋<かぶき うぃず ふぁみりぃ>)が忙しいからダメだ』って言って断ったんだよね(笑)。

 昔からWWEはどうも好きじゃないんだよ。俺がアメリカで活躍していた頃、あそこはレスラーの力量より政治力がものを言う世界でね。選手がもう足の引っ張り合いで、ゴマスリ、ストゥージ(太鼓持ち)ばっかり。あそこに行くと、稼げるんだけど精神的にやられちゃうんだよ。だからマサやん(マサ斎藤)やテリー・ゴディたちも、ちょっとだけWWFに行ってきたけど、すぐに戻ってきたからね。それ以来、俺もニューヨークは避けるようになったから」

 また'90年代前半、WWEが日本のSWSと業務提携を結んでいた際、カブキはSWS側の代表として交渉にあたっており、その時の苦い経験も辞退した理由のひとつだという。

「WWFはSWSと提携していた時も、いろいろ面倒くさいことがあったからさ。当時、自分はマッチメーカーだったから、東京ドームで合同興行をやるときも、頭が痛かったもん。ストレスで頭の中ができものだらけになっちゃってね。

 それに殿堂入りすると、その後1年間はプロレスの活動をいちいちWWEに許可を得なきゃいけないらしいから、面倒くさい。それだったら殿堂入りなんかするより、たまに『出てくれ』って言われる団体に協力してさ、あとはのんびり居酒屋をやっていたほうがいいよ(笑)」

 殿堂入りを受け入れるかどうかは本人次第であり、こうしたカブキのようなケースもまたあるのだ。

【次ページ】 ジャイアント馬場も辞退したひとり。

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