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リオ金・土性沙羅が東京五輪切符。
無観客にも動揺せず、リラックス。 

text by

布施鋼治

布施鋼治Koji Fuse

PROFILE

photograph byJWF/Sachiko HOTAKA

posted2020/03/09 20:30

リオ金・土性沙羅が東京五輪切符。無観客にも動揺せず、リラックス。<Number Web> photograph by JWF/Sachiko HOTAKA

報道規制もかかる中、森川美和とのプレーオフを制した土性沙羅(左)。万全ではないコンディションで迎えた一戦だったが、東京五輪行きを決めた。

あえて2週間マットから離れた。

 焦りがなかったといえば、嘘になる。

 土性は「再び私はマットに戻れるのか」という不安があったことを隠さない。それでもあえて2週間ほどリフレッシュするためにマットから離れた。

「気持ちを切り換えるために、一度リセットしないといけないと思ったんですよ。そうしたら、また頑張ろうという気持ちが勝手に出てきた。やっぱりレスリングが好きだったのかな」

 プレーオフを争ったのは、昨年12月の全日本選手権準決勝で土性から初勝利を挙げ、その勢いで初優勝を果たした森川だった。

 日体大に進学後、森川は細かい組み手のテクニックを学び台頭。持ち前の柔軟性に富んだ体を活かしたレスリングで土性にアタックしたうえでの優勝だった。

 そんな森川に対して土性は「無理やりタックルに行かない」という作戦を立てた。

「全日本選手権では、自分がタックルに入っても体の柔らかさでとれなかったり、返されたりしていた。なので、今回はそこを意識して闘うようにしました」

登坂、川井からのアドバイス。

 案の定、自分からタックルに行くことはできなかったが、逆に不必要に仕掛けて返されるという展開は皆無だった。1-0と僅差のリードで迎えた第2ピリオド、勝負を決したのは森川のタックルをかわした刹那、土性がバックをとった攻防だった。

「とれるところでとらないと厳しい闘いになることを予想していたので、あの場面では何が何でもとらなければいけないという気持ちでした」

 セコンドについた先輩の登坂絵莉、同期の川井梨紗子からのアドバイスも役立った。前日、リオの前にはいつもふたりで居残り練習をしていた登坂からはこんなメッセージをもらったという。

「相手のペースに呑み込まれないように、しっかりとやり切って」

 川井からの言葉も胸に刺さった。

「たった6分間、ずっと攻めなくてもいい。闘い抜いてとれるところでとって」

 これまでは自分で考えて闘うことが多かったが、今回ばかりは周囲のアドバイスをしっかりと取り入れるように心がけた。

【次ページ】 リオが100なら、まだ半分。

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