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イチローが築く、新たなる指導者像。
開幕戦始球式で最速記録なるか?

posted2020/02/26 11:50

 
イチローが築く、新たなる指導者像。開幕戦始球式で最速記録なるか?<Number Web> photograph by Kyodo News

打撃投手を務めるマリナーズの会長付特別補佐兼インストラクターのイチロー。

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笹田幸嗣

笹田幸嗣Koji Sasada

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Kyodo News

「ワォ、イチ! 95マイル・パー・アワー(約153キロ)!」

「ナスティ!」(えげつない!)

「ドミネイト!」(牛耳っている!)

 どの言葉もイチローさんが実戦形式の打撃練習に登板した際にマリナーズのチーム関係者がフィールド上で口にしたものだ。主役は現役選手でなく、間違いなくイチローさん。真剣な練習の場でありながら、誰もが笑みを浮かべ、ほっこりした空気がその場には流れていた。

「楽しいねぇ?」

 イチローさんもご満悦だった。

 一塁に走者を置き守備面を重視した実戦形式の練習で、イチローさんは打撃投手として登板した。首脳陣は「より試合に近い形で投げてくれ」と要望し、直球、ツーシーム、スライダー、カーブの全球種を投げた。だが、全力投球は控えた。

「守備の練習なんで前に飛ばさせないといけない。だから8割」

 8割の力とは言え、通常の18.44メートルではない。マウンドより3メートル前、打撃投手が投げる約15メートルの距離で投げるイチローさんの8割の球は、打者にとってはかなりの体感速度になる。コーチが「95マイル(約153キロ)だ!」と声をかけたのも頷けた。

打者20人と対戦し、4奪三振。

 若手選手たちは直球に差し込まれ、変化球にバットは空を切った。打者20人と対戦し、全球種でひとつずつとなる4奪三振。カウントボールでの空振りも目立った。

「けっこう空振りがとれてたね(笑)。でもバッターは(抑えられたら)腹がたつからね。だから笑わないようにした」

 現役時代の血が騒ぎ立っていた。

 その一方で対戦した若手選手はレジェンドとの対決に興奮を隠さなかった。19歳の有望株フリオ・ロドリゲスは「素晴らしい体験だった」と話せば、スライダーで空振り三振を喫した24歳のホゼ・シリは「イチローと対戦できるなんてラッキーだね」と喜んだ。そして、スコット・サービス監督は感心していた。

「若い選手たちはイチにとても良い感触を持っているね。本当にお気に入りのようだ。イチには我々では見えていない部分が見えているんじゃないかな」

【次ページ】 現役時代の愛用バットでノック。

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