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フィギュア女子、驚異のロシア勢。
強さの鍵、ジャンプのルーツを探る。 

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田村明子

田村明子Akiko Tamura

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photograph byMaja Hitij/Getty Images

posted2020/01/28 11:30

フィギュア女子、驚異のロシア勢。強さの鍵、ジャンプのルーツを探る。<Number Web> photograph by Maja Hitij/Getty Images

欧州選手権で上位を独占したロシア勢。左から、銀・シェルバコワ、金・コストルナヤ、銅・トゥルソワ。

ビクトール・クドリャフツェフとは何者か。

 現在82歳のクドリャフツェフは、面白い経歴を持っている。

 トゥーラ出身の彼は子供のころからバレエと振付を習っていて、14歳のときにボリショイバレエ団の振付学校の入学許可を得た。だが寮がなかったため、滞在する場所を見つけられずにモスクワ行きを断念したという。

 フィギュアスケートをはじめたのは、なんと16歳になってからだった。そして短い期間で頭角を現して何年か競技に出場したのち、6年後の22歳には、コーチとしての活動を始めている。

 彼がコーチとして育てた選手の1人が、1975年にソ連の男子として初めて世界チャンピオンになったセルゲイ・ベルコフだった。ほかにもキラ・イワノワ、イリア・クリムキン、エレナ・ソコロワ、ヴィクトリア・ヴォルチコワなど、彼の生徒が大会で獲得したメダルの数は100個以上に及ぶという。

「まるで神のように跳ぶ」

 1998年長野オリンピックチャンピオンのイリア・クーリックも彼がジャンプの基礎を教え込んだ。

 クーリックのジャンプ技術の高さは、1988年カルガリー五輪王者のブライアン・ボイタノに「まるで神のように跳ぶ」と言わせたほどの高さがあり、着氷の柔らかさが特徴だった。

 2010年バンクーバーオリンピック金メダリストのエヴァン・ライサチェックも若いころはクドリャフツェフに指導を受けていた。

 物心がついてまもなくスケートを始めたという選手が大多数の中で、16歳という年齢は遅い。その彼が、どうやってコーチとしてここまで成功したのか。

【次ページ】 技術理論に忠実に技を学ぶ。

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