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ワンポイント廃止は時短にならず。
見習うべき高校野球のスピード感。 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byHideki Sugiyama

posted2020/01/15 11:40

ワンポイント廃止は時短にならず。見習うべき高校野球のスピード感。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

過密日程や酷暑下でのプレーなど問題は多いが、きびきびとした試合進行は高校野球の大いなる魅力だ。

時間を気にせず試合をする体質。

 むしろMLBの場合は「時間を気にせず試合をする」体質が染みついていることのほうが問題だろう。

 昨年の東京ドームでの、アスレチックスとマリナーズの開幕シリーズ。イチローの引退試合となった3月21日の第2戦は延長12回、4時間27分の大試合となり、試合終了時には0時を回っていた。

 アスレチックスは先発のエストラーダが降板してから7人の投手を繰り出した。マリナーズも先発の菊池雄星が降板してから6人の投手に投げさせた。

 両チームともに日本での最終戦であり、次の試合は3月28日だったから連れてきた投手をすべて投げさせようという意向もあったのだろう。

 しかしイニングのたびに新しい投手がマウンドに立ち、投手コーチがのんびりとそれを見つめる風景には、さすがにうんざりした。その一方でベンチは、帰りの足を気にする客席をまったく意に介してしていないように見えた。

 これ以外にも国際大会では、時間を気にせずのんびりと試合をする風景にしばしば遭遇する。昨年11月のプレミア12でも、ベネズエラやプエルトリコなどは、必要がないと思える場面でもつぎつぎと新しい投手をマウンドに上げていた。

 こうした選手や指導者の意識を変えないことには、小手先のルール改定をしても、焼け石に水に終わる気がする。

高校野球のスピーディな進行。

 その点、最も手本になるのが日本の高校野球だ。昨今の高校野球はいろいろ改革すべきことがあると思う。それでも「スピーディな試合進行」という点では、世界の先駆者ではないかと感じる。

 何しろ春も夏も、1日で最大4試合をこなすのだ。夏などは4試合が終わっても日没前ということも珍しくない。甲子園を借りている期間は限られているため、日程通りに試合を消化することは至上命令なのだ。

 大会運営者は試合前、各校監督に「2時間で試合を終わらせなさい」と伝えるという。攻守交替は全力疾走、ベンチの指示を伝える伝令も全力疾走だ。球審は投手に「早く投げなさい」と促す。投手と捕手のサイン交換も長くなれば注意する。打者が打席を外すのも度重なれば注意する。

【次ページ】 試合を端折っている印象はない。

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