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ワンポイント廃止は時短にならず。
見習うべき高校野球のスピード感。 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byHideki Sugiyama

posted2020/01/15 11:40

ワンポイント廃止は時短にならず。見習うべき高校野球のスピード感。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

過密日程や酷暑下でのプレーなど問題は多いが、きびきびとした試合進行は高校野球の大いなる魅力だ。

人気回復策として時短に乗り出す。

 NPB、MLBのゲーム全体で見て、ワンポイントの及ぼす影響は軽微だ。もちろん局面ではルール導入前後で違和感を抱くことはあるだろうが、大きな問題ではない。端的に言えば「投手のワンポイント起用」は、イメージ先行の戦術で、それほど重要なものではなかったのだ。

 では、MLBは今になってなぜ「スリーバッター・ミニマム・ルール」を導入しようとしているのか?

 これは北米で野球人気に陰りが出る中で、MLBサイドが何としても時短を実現したいと考えているからだ。

 MLBと競合するプロスポーツのうち、NBAの試合時間は12分で1クオーター、計4クオーターの48分。NFLは15分で1クオーター、計4クオーターの計60分である。

 両方ともにハーフタイムやインターバルがあり、クロックが止まることもあるからトータルでは2時間を超すが、正味の試合時間だけで優に3時間を超す野球はけた外れに長い。このことが、NBAやNFLのファンからは「ありえない」と言われている。

 すでに野球の国際大会では7回戦制のケースも出ているが、MLBとしてはこれ以上の“野球離れ”を防ぎ、新規顧客を獲得するために試合時間を短縮しようとしているのだ。

敬遠数は2~3試合に1個くらい。

 しかしここまでのMLBの「時短施策」は、2階から目薬に近い。

 2017年からMLBで、翌年からNPBで導入された申告敬遠もその1つだ(投球数節約の意味もあった)。ただそもそも敬遠(IBB)は、2019年のMLBでは2429試合で753個、NPBでは858試合で300個。いずれも2~3試合に両チーム合わせて1個しか出現しなかったのだ。

 仮に1つの申告敬遠で60秒を時短できたとしても、昨年1年のトータルでMLBで1試合当たり19秒、NPBでも21秒に過ぎない。これくらいの秒数は、打者が打席を数回外せば吹っ飛んでしまう。

 同様に「スリーバッター・ミニマム・ルール」も、時短の実効性としては極めて限定的である。

【次ページ】 時間を気にせず試合をする体質。

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