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映画でDeNAの2019年を残す意義。
広報の力説から感じた「横浜愛」。 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2019/12/13 11:30

映画でDeNAの2019年を残す意義。広報の力説から感じた「横浜愛」。<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

DeNAのドキュメンタリー映像を見れば、選手たちが筒香嘉智のメジャー挑戦を覚悟して戦った1年だったことが分かる。

広報が語る「リアルさ」の意図。

「2012年にDeNAが球団を運営した年から、ベイスターズのリアルなドキュメントをそのまま紹介しようと思っていました」

 横浜DeNAベイスターズ広報部の河村康博さんは話す。情報系の企業らしく、ベイスターズのすべてを「コンテンツ」としてとらえていたのだ。

「テレビや新聞が入ってこないロッカールームにもカメラが入ります。ときには車を運転する選手の助手席でカメラを向けたり、打たれて降板した直後の投手のベンチでの表情を追いかけたりします。選手にはかなりの負担を強いていると思います。でも、ここまで続けていく中で、選手は"うちのチームはこういうチームだ"と理解してくれているみたいですね」

 ベイスターズは、球団のことをどこまでもオープンにしようとしている。河村さんによると、キャンプ初日には、経営陣がベイスターズの経営状況、観客動員から売り上げなどを余さず選手に伝えるという。

「自分がどういう風にして年俸をもらっているのか。ファンの応援が、どんな風にお金に変わっているかを、選手ひとりひとりが知ってほしいからです」

 その徹底した「正直さ」が凝縮されたのが、この映画だといってもよいだろう。

「チームの一体感」を作る難しさ。

「でも、今年は何とか2位に入ったし、いいシーンも多かったのでよかったですが、昨年は4位に終わってCSにも進出できなかった。だから僕たちは映画を見ていてもつらかったですよ」

 実力の世界であるプロ野球では、チームは毎年入れ替わる。筒香は、柴田竜拓に「チームのレベルは上がっている。ちょっと気を抜いたら消えていくぞ」というのだ。

 そんなシビアな世界で「チームとしての一体感」を醸成するのが、いかに難しいかが伝わってくる。

 ベイスターズは今期、観客席を増設したがそれもすぐに埋まり、動員率は99%に迫っている。来年には観客席は約3万5000になるが、今の人気ならばこれも満員になるだろう。

 そうなれば、企業としての横浜DeNAベイスターズは、入場料の部分でこれ以上の急成長は見込めなくなるだろう。もちろん、客単価をアップするなど方策はあるが、その「先」を見据えなければならない。

【次ページ】 横浜という街にコミットメントする。

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