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映画でDeNAの2019年を残す意義。
広報の力説から感じた「横浜愛」。 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2019/12/13 11:30

映画でDeNAの2019年を残す意義。広報の力説から感じた「横浜愛」。<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

DeNAのドキュメンタリー映像を見れば、選手たちが筒香嘉智のメジャー挑戦を覚悟して戦った1年だったことが分かる。

筒香キャプテンのラストシーズン。

 今シーズン前、キャプテンの筒香嘉智は、チームに「ポスティングによるMLB挑戦」を訴え、チームもおおむね了承したと報じられていた。

 必然的に2019年シーズンは「筒香キャプテン、最後のシーズン」と位置づけられることになる。事実、映画は筒香がキャプテンとしてどのようにチームを引っ張ったか、ナインを鼓舞したかがメインテーマになっている。

 筆者は近年、オフに各所で「少年野球を救え」とアピールする筒香を取材してきた。彼はそれほど弁が立つタイプではないが、自分の言葉で一生懸命、考えを伝えようとする。その素朴さと誠実さに心惹かれたが、そうした真摯な部分は、チーム内でもまったく変わらなかった。

 ロッカールームで、筒香は関西のなまりが混じる言葉でナインに切々と語りかける。後輩の選手にアドバイスしたり、励ましたりしている。彼がベイスターズにとっていかに大きな存在かがわかる。

山崎康晃が言っていたこと。

 そして今年のナインは「今年で筒香キャプテンがいなくなる」ことを痛いほど意識していたのだ。クローザーの山崎康晃はきっぱりと言う。「来年は筒香さんがいなくなったから、弱くなったといわれたくない」と。

 しかしこんなすばらしいチームでも、万々歳の結果になるわけではない。巨人を追い詰めるも最後は優勝を許し、クライマックスシリーズでも終盤まで阪神を追い詰めながら敗退するのだ。

 ファンやチームにとって「不都合な真実」も、そのまま紹介している。まあ、こういう内容でなければ約2時間の劇場映画にはならなかったと思うが。

【次ページ】 広報が語る「リアルさ」の意図。

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