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零細球団削減と草の根の損壊。
マイナーリーグ再編問題を考える。 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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posted2019/12/07 11:30

零細球団削減と草の根の損壊。マイナーリーグ再編問題を考える。<Number Web> photograph by Getty Images

野球殿堂の記念試合も行われるクーパーズタウンのダブルデイフィールド。こういった雰囲気のスタジアムがなくなっていくのか。

収容人員4500名のダマシュキー・フィールド。

 たとえば、ニューヨーク州オニオンタにはダマシュキー・フィールドという球場がある。

 野球の殿堂があるクーパースタウンにほど近く、かつて全米サッカーの殿堂(地味で控え目な建物だった)が設けられていたことで知られるこの町には、1905年に開場した(開場時の名はエルム・パーク。'68年以降ダマシュキー・フィールドと改称)古い球場が存在するのだ。

 場所は、グランド・ストリートという町の目抜き通りから少し外れた、公園の一隅だ。「たそがれの四阿(あずまや)」といった小体な趣で、収容人員も4500名と少ない。

この球場はハートに沁みた。

 私が訪れたのは1998年のことだが、この球場はハートに沁みた。

 看板も、アーチも、制服を着た従業員もいない。球団の従業員が、入場券のモギリとホットドッグ売りを兼ねている。ネット裏のグランドスタンドと、一塁線と三塁線に沿って設けられたブリーチャーがあるだけの素朴な作りで、グランドスタンドの木製の座席には、背もたれさえついていなかった。三塁側はアルミのベンチだが、一塁側は昔ながらの木製ベンチだ。

 グランドスタンドの最上段に席を取ると、景観が素晴らしい。左翼後方にはキャッツキル山地のなだらかな稜線。一塁側ブリーチャーの背後には雑木林。右翼後方には、かなり深い森が広がる。

 ナイトゲームがはじまると、それらの借景が、じわりと忍び寄ってくる夕闇に染められ、たがいの輪郭を溶かし合う。浅い夢を見ているような気分に包まれる。

 私が行ったとき、ここはオニオンタ・ヤンキース(ニューヨーク・ヤンキースのシングルAチーム)の本拠地だった。その後はデトロイト・タイガースと提携するようになり、2009年までオニオンタ・タイガースの本拠地として使用された。

 現在は、カレッジ野球リーグに属するオニオンタ・アウトローズの本拠地となっている。

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