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<女子ハンドボール世界選手権プレビュー>
おりひめジャパン「世界を倒す準備はできている」 

text by

田口有史

田口有史Yukihito Taguchi

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photograph byYukihito Taguchi

posted2019/11/14 16:00

<女子ハンドボール世界選手権プレビュー>おりひめジャパン「世界を倒す準備はできている」<Number Web> photograph by Yukihito Taguchi

全体の前で発表して議論するスタイル。

 この世界選手権をきっかけに、チームの進化は加速していく。2019年大会でのさらなる飛躍を果たしたいおりひめジャパンの今の雰囲気について永田はこう言う。

「メンバーが固定されて長い時間が過ぎ、経験を積んできたので、みんなが自信を持って、自主性が出てくるようになりました」

 継続的に代表合宿に呼ばれているウルリックのチーム作りの核になる選手は戦術的、システム的な土台はできている。しかし、そういった選手たちの意見が一方通行にならないように気をつけているという。

「みんなが会話できるように工夫をしています。グループごとに別れてディスカッション。そして全体の前で発表して、議論をしていくスタイルはキャプテンと相談し決めました。そうすることによって、普段はおとなしい子たちも、しっかりした考えを伝えたり、話すことができます」

 7月から8月にかけては40日に渡る合宿生活を送ったこともあって、普段の生活でも上下の関係なくコミュニケーションが取れている。だから今のチームは、招集されると、すぐに実戦に入っていける。

注目はディフェンスへの意識と献身

 こうした雰囲気は、試合での結果として現れている。大きくて、重いヨーロッパの選手たちを相手にしてのディフェンスは、おりひめジャパンの生命線。

 体格差を使って押し込んでくる相手を1人で守りきるのは難しい。日本人の敏捷性、機動力、クレバーさを使って、2人、3人と連携しなくてはならない。その為には、それぞれが自立して、ともにコートに立つ選手に要求を伝える必要がある。

「日本の強みはディフェンス。海外のチームは、6人がベッタリとライン際で守ることが多いのですが、日本はもっと前に出るなど牽制したり、駆け引きをしています」

 以前は選手が交代になる度にやるべき事が変わっていたが、今はチーム全体の意思の疎通によって、誰と組んでも同じ事ができるという。ともにディフェンスを組む相手を信頼すればこそ、自分のマークする相手との駆け引きに集中できる。

「実際に観戦に来てもらえると、1階席だと、身体の当たる音も聞こえるかもしれません。重心を低くして、積極的に当たって激しく守る姿に注目して欲しいですね」

 また、ディフェンスの安定はオフェンスにも好影響をもたらし、1試合平均の得点が増えている。今の課題は速攻での得点を増やす事と、7人攻撃でキチンとシュートを決めきる事。そして攻撃後のディフェンスへの戻りを速くする事。オフェンスでミスをしても、相手に得点させなければ帳消しにする事ができる。ディフェンスへの意識と献身で世界一を目指している。

【次ページ】 「地元の声援を受けて、世界一を」

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