“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER

セルビアで吹っ切れた浅野拓磨。
「カッコつけることをやめました」

posted2019/10/14 19:00

 
セルビアで吹っ切れた浅野拓磨。「カッコつけることをやめました」<Number Web> photograph by JFA/AFLO

前日練習に笑顔で参加する浅野拓磨(左から2番目)。新天地のセルビアでは「ポジティブにやれている」と語った。

text by

安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

PROFILE

photograph by

JFA/AFLO

 埼玉スタジアムで行われたFIFAワールドカップ・アジア2次予選、日本vs.モンゴルの一戦。

 浅野拓磨は6-0と快勝した試合のピッチに立つことはなかったが、試合後のミックスゾーンでの表情は晴れやかだった。

「久しぶりに代表に来て、雰囲気がいいなと思いますし、何よりここに来て、いろんな選手から刺激を受けられることが物凄く大きいんです。やっぱりここに来ないと受けられない刺激があるなと改めて感じました」

 森保一監督が就任してからは2度目の代表合流。森保体制発足となった2018年9月に初めて招集されて以来、約1年ぶりの代表戦だった。その間、一切声が掛からなかったわけではない。何度か森保監督は彼を召集しようとしたが、いずれも負傷などが重なった。今年1月のアジアカップの23人には選ばれていたが、大会前に負傷離脱を強いられていた。

「代表が遠いものとは思っていなかったのですが、離れていたという部分では正直焦りのようなものはありました。選手としても所属チームで試合に出られなかったりとか、なかなか厳しい状況だったので……。『なぜタイミング悪い時に怪我をしてしまうんだろう。運がないのかな』とか、『サッカーの神様は本当に見てくれているのだろうか』など、いろんなことを考えてしまいました。本当にしんどかったというか……」

多くの人が驚いたセルビア移籍。

 森保ジャパンが発足する直前に、彼は2シーズン過ごしたシュツットガルトを離れ、同じブンデスリーガのハノーファーにレンタル移籍。開幕戦からスタメン出場するなど、幸先の良いスタートを切っていた。

 だが、徐々に出番が減り、さらに今年に入ると籍を置くアーセナルとハノーファーの契約問題など、外的要因も影響し、ベンチから外れるようになった。ハノーファーの2部降格が決まった試合もスタンドから試合を見つめることになった彼は、次なるシーズンに向けて動き出していた。

 そして、今年8月1日。彼が新天地に選んだのはセルビアの名門パルチザン・ベオグラードだった。このニュースには多くの人が驚かされただろう。Jリーグ復帰も噂されていた中で、誰もが予想していなかったセルビア行き。国内リーグ優勝8度を誇る名門クラブへの完全移籍を果たした。

 この決断の裏には大きな葛藤があった。

【次ページ】 「待つよりも、早くサッカーがしたい」

1 2 3 4 NEXT
浅野拓磨
ワールドカップ
カタールW杯

サッカー日本代表の前後の記事

ページトップ