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内村、白井のいない体操ジャパン。
引っ張るのは“元補欠”神本雄也。 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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posted2019/10/05 11:50

内村、白井のいない体操ジャパン。引っ張るのは“元補欠”神本雄也。<Number Web> photograph by AFLO

世界選手権出発時のセレモニーで神本雄也は「日本の美しさ、強さをアピールして金メダルを取ってきたい」とコメントした。

「緊張すること自体、これまであまりなかった」

 メンタルを左右するのは、大会が違うから、場所が違うから、という要素ではなく、大会を迎えるまでにしっかり練習を積むことができたかどうかによるのだと神本は言う。

「ちゃんと準備ができていれば緊張することもないし、逆に準備がちゃんとできていないと緊張します。でも、緊張すること自体、これまであまりなかったように思いますね」

 今回の世界選手権ではつり輪、平行棒、鉄棒での出場が有力視される。ドイツへ出発する前の9月18日に東京都内で報道陣に公開して行なった試技会では、つり輪で14.550点、平行棒で15.100点といずれも5人の中で最高点をマークした。

 日本人が不得意なつり輪で貴重な得点源として計算の立つ選手であり、平行棒は種目別メダルの期待も持てる。試技会ではミスした鉄棒も、演技を通せば高得点を狙える。

 大会中は強化本部と選手のパイプ役にもなる。

「チームは励まし合いながら、声を出し合いながら良い雰囲気でここまで来ています。この雰囲気を継続してやっていければいい」と話す神本を、岡山・関西高校と日体大の先輩でもある水鳥本部長は、「キャプテンシーも徐々に出てきている」と頼もしく見つめている。

2016年、ギリギリでの代表落ち。

 神本と言えば思い出す光景がある。リオデジャネイロ五輪の代表選考シリーズが開催された'16年春。

 4月の全日本個人総合選手権で4位になったのに続いて5月のNHK杯でも4位になり、リオ五輪出場まであと一歩と迫った神本は、団体総合への貢献ポイント枠での代表入りを目指し、最後の勝負となる6月の全日本種目別選手権に臨んだ。

 つり輪では力技を次々と決めたものの最後の下り技で着地に失敗。それでも平行棒ではほぼ完璧な演技で全体のトップとなる15.800点をマークした。

 しかし、同じく貢献枠で代表入りを目指した山室光史を上回るのにわずか0.100点足りず、代表を逃した。その頃の神本の平行棒は五輪に出ていれば金メダル候補の一角となるレベルにあっただけに、悔やまれる結果だった。

「平行棒は自分でも凄く満足のいく演技内容だったんです。ふと“これで(リオ五輪に)出られなかったらもうしょうがねえや”と口にしていたほどで……」(神本)

 結果は無念。だが、代表に届かないことが分かった後の神本は、穏やかな笑みを浮かべてともに競い合った仲間を称えていた。そして、その姿は補欠としてリオ五輪に帯同されても変わらなかった。代表メンバーとともに金メダルを目指して必死に日々の練習を行ない、本番だけチームから離れ、スタンドから応援した。

【次ページ】 補欠を経験し、東京五輪では出場へ。

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