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スクラムとラインアウトって何?
沢木敬介のタメになるラグビー解説。 

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沢木敬介

沢木敬介Keisuke Sawaki

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photograph byGetty Images

posted2019/09/28 08:30

スクラムとラインアウトって何?沢木敬介のタメになるラグビー解説。<Number Web> photograph by Getty Images

前回大会よりも日本代表のスクラムは強化されている、と沢木敬介氏。強豪アイルランド相手に「低く組めるか」が見所だ。

ラインアウトで並ぶ人数は?

【ラインアウト】

ボールがタッチラインから出ると、選手が2列に並び、スローインのボールを奪い合うラインアウトで試合が再開される。大柄な選手がバレリーナよろしく持ち上げられ、派手な空中戦が繰り広げられるのでとても目立つプレーだが、その裏には驚くべき駆け引きがある。

◇ ◇ ◇

 列に並ぶのはスクラムと同じくFWの選手ですが、実は並ぶ人数は決まっておらず、投げ入れる側に、ラインアウトに参加する人数を決める権利があります。ラインアウトで最も重要なのがマイボールを確保すること。だからこそ、なるべく人数のバリエーションを持つべきなんです。

 ボールをキャッチするロックの選手を今は2m近く持ち上げますが、私の現役時代はまだ短パンを掴んで少し持ち上げるくらいでした。

 ややマニアックですが、マイボールを確保するために大切なのが「サイン」です。野球のように手ではなく簡単な単語を声で発して伝えます。

 サインにはラインアウトの形を決めるものと、その後のバックスの動き方を決めるものの2種類あります。前者は相手のシフトを瞬時に判断し、誰が、どの位置でキャッチするかを決める。サインは並ぶ人数で変わり、前回W杯は5人、6人、7人それぞれの場合に2つずつ作っていました。

南ア戦で五郎丸が決めたトライ。

 例えば、南ア戦後半28分の五郎丸のトライの前は7人。分析の結果、南ア相手には7人が一番トライを取りやすいと把握しており、真ん中よりやや後ろの位置でキャッチします。

 このときのバックスのサインは「府中12内」というものですが、それを成功させるために遠めの位置で取る必要があった。それが上手くいったため日和佐がパスを右へ展開した時点で南アの守備がズレており、動きの遅いプロップの選手が日本のバックス陣と対面。そのカバーをするために南ア全体の動きが少し止まったんです。そこであの試合で好プレーを連発していた立川が囮になり、背後に隠れていた松島がパスを受けて抜け出して、最後は五郎丸が決めた。

 実はこのバックスのサインプレー、W杯に入る前の試合では1回も試しておらず、南ア戦のために用意したものでした。相手は驚いたでしょう。非常に上手くいったラインアウトからのプレーでしたね。

(構成/茂野聡士)
 

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