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新体操日本代表が欧州勢破り金メダル。
“恋”の指導やルール変更も追い風に。 

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長谷部良太

長谷部良太Ryota Hasebe

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posted2019/09/26 20:00

新体操日本代表が欧州勢破り金メダル。“恋”の指導やルール変更も追い風に。<Number Web> photograph by Ryota Hasebe

団体総合決勝でボールの演技を終え、歓声に応える日本メンバー。東京五輪前年に大きな結果を残した。

女王を追い詰め、破ったフェアリー。

 8チームによる団体総合決勝。記者兼フォトグラファーとして会場にいた私は、ファインダー越しに日本チームの迫力ある演技を見ながら思わず鳥肌が立った。

 他国の応援団や関係者までもが、日本の演技に大きな拍手と歓声を送っていた。競技の終盤まで、電光掲示板の一番上には「JAPAN」の文字が並んでいた。ロシアは最初のフープ・クラブの得点が日本を下回り、報道陣は「日本が初の金メダルか」と色めきだつ。

 しかし、ロシアはボールで驚異の30.000点をマーク。計り知れない重圧の中、ミスを抑えた演技を実施した精神力はさすがだった。結果はロシアが2種目合計58.700点で団体総合4連覇を達成。日本は58.200点の2位で、その差はわずか0.5点。女王をあと一歩まで追い詰め、日本は過去最高成績に並ぶ銀メダルを手にした。

 その翌日、「フェアリー」たちがやってのけた。種目別決勝に臨んだ日本はまず、ボールで前日を上回る29.550点をマーク。ロシアは全ての技を実施できず28.150点で3位にとどまり、日本が団体史上初の金メダルに輝いた。その快挙を知った瞬間、メンバーは大きな声を上げて感涙した。

審判に強さが本物と理解させた。

 大事な五輪の前年に、日本の強さが本物だと審判に理解させるのに十分な内容と結果を示したことは意義深い。2位ブルガリアと0.2点差の大接戦を制する勝因になったのが、またもやDスコアだった。日本は前日より高い20.900点の演技構成で臨み、相手のDスコアを0.2点上回った。続くフープ・クラブでも日本はロシアに次ぐ銀メダル。こちらも前日よりDスコアを高めたにも関わらず、大きなミスなく演じてみせた。

 日本の強化の1つの終着点とも言える金、銀、銀の3つのメダル。取材中、選手たちが首から下げたメダルが重なり合うたび、心地良い音が響いた。

 杉本キャプテンは「もう、すっごくうれしい。東京五輪でもう一度『君が代』を歌えるように、来年に向けて頑張っていきたい」と意を強くした。

 ひときわ印象的だったのが、ロンドン五輪前から代表として活躍する松原梨恵の言葉である。

「今までフェアリーの方々が積み上げてきた物が、やっと花咲いた。本当にいろんな人の力があって金メダルが取れたと思う。すごく感謝している」

【次ページ】 「本当にいろんな人たち」の献身が。

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