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ランパード・チェルシーを包む、
第1期モウリーニョと同じ高揚感。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byUniphoto Press

posted2019/09/22 09:00

ランパード・チェルシーを包む、第1期モウリーニョと同じ高揚感。<Number Web> photograph by Uniphoto Press

現役時代は攻守に幅広く関与するタイプだったランパード。新監督としてチェルシー再建に挑んでいる。

11失点はリーグワースト2位だが。

 15年前、開幕3カ月間無敗を続けた当時と違い、理想とは程遠い滑り出しではある。初陣での黒星は、マンチェスター・ユナイテッドに4失点で敗れたリーグ開幕戦に続き、今回のCLが2度目。グループステージ初戦で敗れたチェルシーの監督は、ランパードが不名誉な第1号となっている。

 ホームで勝ち星がなく、開幕からの計7試合で無失点試合もなし。リーグ5試合で合計11失点は、今季の20チーム中ワースト2の数字となっている。だが、開幕戦から盛んにメディアで指摘される「夢と現実の差」は、ランパード自身はもとよりファンも覚悟の上。加えて、目の前で展開する現実では少なくともマイナスを相殺できるだけのプラスが、新監督によってもたらされている。

 バレンシア戦で勝敗を分けた1点は、ダニエル・パレホがふわりと放り込んだFKを、ノーマークのロドリゴに決められた失点だった。セットプレーの弱さと簡単にペナルティエリア付近への侵入を許す守備の脆さは、マウリツィオ・サッリ前体制下からの課題だ。ただし、前任者の身上であった攻撃面は、ファンの目には改良が施されたと映る。

「よりダイレクトなアプローチ」

「よりダイレクトなアプローチが織り交ぜられている」とは、チームの最後方から自軍を眺めるGKケパが、試合前日会見で挙げた昨季と今季のスタイルの違いである。

 同じポゼッション・サッカーでも、相手を“パス殺し”にするような“サッリ・ボール”よりも、“フランキー・ボール”と呼ばれることもあるスピードとダイナミックさがブレンドされたランパード流の方が、評価されている。最終的にサッリ流を「遅攻」と嫌うようになったチェルシー・ファンの好みに合っているようだ。

 しかも、開幕5試合で計11得点を記録したリーグ戦でのスコアシートには、生え抜きの若手が名を連ねているのだからファンには堪らない。

 筆頭格はバレンシア戦でもセンターフォワードで先発したタミー・エイブラハムだ。21歳はプレミア第5節ウォルバーハンプトン戦(5-2)で、チェルシーのトップチームにおいて自身初のハットトリックを達成し、現在7得点。監督の信頼に応えて自信を増し、オフ・ザ・ボールでの動きにも迷いがなくなってきた。

【次ページ】 エイブラハムがゴールを量産中。

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