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甲本ヒロト×安美錦
土俵の上に「情熱の薔薇」を。 

text by

佐藤祥子

佐藤祥子Shoko Sato

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2019/09/17 18:00

甲本ヒロト×安美錦土俵の上に「情熱の薔薇」を。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

初めての相撲部屋訪問に、甲本ヒロトさんも大喜び。感激するも興味津々の甲本さんに、目を細める安美錦関だった。

甲本「『すげえバンドやってるんだぜ』って」

甲本「安美錦関の取り口は、毎回アッと言わせてくれますが、あれはいつ考えているんですか?」

安美錦「あまり緻密には考えていないんですよ。何パターンか頭に入れておいて、その中で何があっても対応ができるようにしています。こっちが有利に立てるような考え方を。もちろん、すべてできるわけではないですけどね」

甲本「勝負は一瞬ですもんね」

安美錦「あとはとにかく思い切って相撲を取る。それだけですね」

――安美錦関は普段、どんな音楽を聴いていらっしゃいますか。

安美錦「以前は車の中でラジオをかけていました。最近はいろいろな音楽を試しているんですよ。たとえば、クラシックをかけてみたり。怪我をした時には、よくブルーハーツの歌を聴いていました。一番聴いていたのは、『情熱の薔薇』。気持ちが落ちてふさぎ込んでいるときに、妻が『歌でも聴きなさい』と勧めてくれたんですが、歌詞がすごく心に響いてきて。

 泣きました。

 情熱の薔薇をいっぱい胸に咲かせるには、結果を出すためには、やはり稽古しかないんだなって。心の奥に答えがあるとはそういうことなんだなと思いました。僕はこの曲のおかげで開き直って稽古に臨めるようになったんですよ。本当におかげ様です」

甲本「ありがたいですね。僕も大相撲から感動をもらっていますよ」

安美錦「相撲も一生懸命やっていれば、見ている方の心に響く。あと、素直に向き合ってやることが一番大事だと痛感しました。僕は相撲が好きで、やりたいことをシンプルにやっているだけ。これからもその気持ちを大事にしたいですね」

――そんなおふたりが、今、後輩のミュージシャンや力士たちに伝えたいことは。

甲本「30年間頑張ってきたから偉いんじゃなくて、今日やっているからかっこいいんだぜっていうことだけですね。僕は『すげえバンドやってたんだぜ』って言いたくないんです。『すげえバンドやってるんだぜ』って言いたいんです。過去形ではなくて、現在進行形。その気持ちは安美錦関からも感じられる」

安美錦「そうですね。稽古すれば上に上がる世界ですからね。うちの親方もよく言うんですけど、相撲ほど稽古すれば強くなるスポーツはないし、頑張った分だけ返ってくる世界。だからこそ、もう少し頑張ればいいのにと感じることもあります。それを言われて気づくのではなく、自分で気づければなおいいですよね」

【次ページ】 安美錦「妻に『本当に相撲が好きねえ』って」

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