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「どうしたらいいかわからない」
阪神・鳥谷敬が吐露した弱音。
posted2019/09/02 15:00
text by
田中大貴Daiki Tanaka
photograph by
Kyodo News
「初めての経験なんですよね。どうしたらいいかわからない。これが本音です」
今年の夏に入る頃、鳥谷敬がゲーム前に吐露した言葉が忘れられない。
プロの世界に入ってベンチスタートの選手として迎えるシーズンは彼にとって初めて。プロ16年目の日々は毎日が手探りだった。
「これまでは試合に出て、身体の状態が確認出来て、課題が生まれて、試合前後の調整法や心の持っていき方を考えることが出来ました。今年は……試合に出ないという中でどう自分を整えるか。毎日が難しい。でも身体は元気なんですよ、ほんと」
怪我をしていても、精神的に苦しくとも自分の弱い部分を見せて来なかった人間。学生時代からそうだった。
初めて弱い部分を見せていた。
東京六大学で1年生から早稲田大の中心選手として名を馳せ、僕は慶応大時代、慶早戦で相手チームとして何度も鳥谷敬の存在の大きさを肌で感じてきた。常に冷静で凛としている。表情は全く変えない。時には冷たくも感じるほど沈着した選手が鳥谷。
そんな彼が悩んでいた。珍しく、いや、初めて弱い部分を見せていた。
この変化に大学時代から彼を見てきた僕は驚いた。
「いい方法があったら教えて欲しいくらいです。この状況で結果を残す術は何なのか。やっぱり僕は日々、起用してもらってきたからこそ結果が出た選手。1試合、1カード、1カ月、1シーズンというトータルで見てもらった時に意味をなす選手だったんです。
代打で、1打席で、1度の守備機会や走塁機会で結果を残すにはどうしたらいいか、どう自分と向き合えばいいか、まだ答えは出ていないんですよね」
密かに走り込みを増やし、身体によりキレを出そうとトレーニングに取り組んできた2019年シーズン。