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RIZIN王者・堀口恭司をKO!
朝倉海、大番狂わせの“必然”。

posted2019/08/24 20:00

 
RIZIN王者・堀口恭司をKO!朝倉海、大番狂わせの“必然”。<Number Web> photograph by (C)RIZIN FF

朝倉海の右のカウンターが見事に堀口恭司に刺さった瞬間! 世紀のアップセットは、ここから始まった。

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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(C)RIZIN FF

 ビッグニュースが広まるのは早い。

「堀口恭司、負けたってよ!?」

「1ラウンドKOってマジかよ!」

 8月18日。都内の大会を取材していた筆者にも、RIZIN名古屋大会の結果が伝わってきた。記者席の話題はそれ一色と言ってもよかった。

 それだけインパクトのある、超の付くビッグ・アップセットだったのだ。堀口は修斗の世界王者からUFCトップ戦線で活躍。RIZINに戦場を移すとバンタム級に階級を上げてタイトルを獲得した。今年6月にはアメリカでベラトールのベルトを巻き“日米メジャー2冠”を達成している。

 この日、世界的ビッグネームとノンタイトルで闘ったのは朝倉海(かい)。兄の未来(みくる)とともに“朝倉兄弟”として売り出し中の新鋭だ。選手としての“格”で言えば、この試合はいわゆるチャレンジマッチだった。だが、その格を海は見事なまでにひっくり返した。

海が見せた堀口攻略法とは?

 戦前から、朝倉兄弟は堀口攻略への自信を語っていた。実際、試合の映像を見てみると、海は序盤から堀口とフェイントをかけ合い、パンチにしっかり反応してカウンターを繰り出している。

 堀口の打撃は伝統派空手をベースにした独特の間合いと軌道を持つ、相手にとって厄介この上ないスタイルだ。それを真正面から突破したのである。

 勝利を引き寄せたのは、最も狙っていたという右のパンチに合わせての右だ。自身のYouTubeチャンネルで海が振り返ったところによれば「堀口選手は右を打つ時に顔が左に傾く。だから右のパンチを右(寄り)に合わせようと」準備していたそうだ。1つひとつの動きに対してどう返すか、時間帯に応じた闘い方など「長くなりすぎるから説明できない」くらいの戦略を練ってもいた。

「一発では倒せないから、効かせた後に落ち着いて攻めるのも大事だった」と海。右をヒットした後、反撃しようとする堀口にヒザを放つ冷静さを見せていた。タックルやクリンチを防いだわけだ。トドメの連打の中でフェイントを入れるような動きを見せてもいた。

【次ページ】 那須川天心も絶賛した「勝因」。

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