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高校野球の控え投手の価値を上げた。
中京学院大中京がなしとげた革命。 

text by

氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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photograph byHideki Sugiyama

posted2019/08/20 17:30

高校野球の控え投手の価値を上げた。中京学院大中京がなしとげた革命。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

中京学院大中京の継投は見事なものだった。村田翔も、ワンポイントという難しい仕事を果たした。

2番手以下の投手が、出番を待っている。

 ここで重要なのは控え投手たちの意識だ。

 安定感のあるエースがチームにいる場合、控え投手が自分の出番はないと決め込んででしまうケースがある。しかし、中京学院大中京の控え投手陣は常に自分の出番に備えることができていた。

 3回戦と準決勝の2試合に登板した村田はこう話す。

「コーチから出番があると言われているので、常に行ける準備はしています。ただ肩を温めているのではなく、出番があると思って準備をしているので、気持ちは違うと思います。自分が登板したときに抑えるかどうかが流れに影響するので、後悔しないようにと思っています」

 村田が圧巻だったのは、東海大相模戦で見事な火消役を務めて、その後の大逆転劇につなげたことだ。

球数制限議論が見落としているもの。

 橋本監督が上手かったのは、継投の形を状況によって変えていったことだ。

 2回戦は元をクローザーにして、ランナーを背負った場面での火消し役を赤塚が務めた。3回戦は村田がワンポイントで相手の勢いを止め、調子の良くなかった元はすぐに交代。クローザーは赤塚が務めた。

 一方、準々決勝では先発の不後が初回に3失点した後に元が流れを変え、赤塚もワンポイントで投入、最後は再び元にスイッチして試合をクローズしている。

 昨今は投手の登板過多に関する問題で球数制限が話題になることも増えたが、「エースが燃え尽きるまで投げさせたい」という意見もまだまだ根強い。その陰で、同じように3年間練習してきた2番手以下の投手に目が向くことは少ない。

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