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「考える野球」で甲子園初勝利。
国学院久我山の強さは日常にある。 

text by

高木遊

高木遊Yu Takagi

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photograph byKyodo News

posted2019/08/09 12:40

「考える野球」で甲子園初勝利。国学院久我山の強さは日常にある。<Number Web> photograph by Kyodo News

夏の甲子園1回戦で前橋育英に勝利した国学院久我山。尾崎監督(左)はエース高下とがっちり握手した。

「どのような自分になりたいか」

 そして7回、ついに打線が前橋育英のエース・梶塚彪雅を捕らえた。二死走者無しから怒涛の5連打で逆転に成功した。

「集中打が魅力のチーム。終盤まで競ればなんとかなると思っていました」(尾崎)

 反撃の時を待つ。尾崎の考えも選手たちと同じであった。このリードを守り、5失点ながら完投したエース右腕・高下耀介に対しても信頼は厚い。

「“もっと外にすればよかった”、“もっと低めに投げればよかった”と言っていて課題は分かっているようでした。打者の特徴を見ながら投げ抜いてくれたと思います」

 彼らの日々の練習は学校の規則で平日・土日にかかわらず1日3時間までと定められている。グラウンドもサッカー部と併用のため平日は週1日しか全面を使えない。さらに18時半には完全下校となるため平日練習は2時間半ほどだ。偏差値71の伝統ある進学校でもあり、残りの時間を勉強と野球にいかに使うかは選手たちに委ねられている。

 そんな毎日だからこそ「どのような自分になりたいか」は常に問われている。それが試合になれば「どのように勝つか」と自ずと考えられるようになるのは当然なのかもしれない。

磨いてきた「考える野球」。

「彼らの主体性がこの甲子園で一番出ましたね」

 ヒットを打ったことでも、三振を奪ったことでもない。このコメントをした時の尾崎が最も嬉しそうで誇らしげに見えた。

 23歳での就任以来、モットーとする「考える野球」が選手たちの主体性や前向きな姿勢を生み、西東京大会から続く快進撃の原動力となっているのは間違いない。この旋風はどこまで続くだろうか。

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尾崎直輝
國學院久我山高校

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