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村田諒太は自分も思考も変えられる。
「苛立ちはない、虚勢も張らない」
 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byHiroaki Yamaguchi

posted2019/07/12 08:00

村田諒太は自分も思考も変えられる。「苛立ちはない、虚勢も張らない」<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

肉体的にも精神的にも、村田諒太の状態は極めて良さそうだ。運命のゴングは今夜なる。

プレッシャー、ガード、右の三種の神器。

 村田には三種の神器がある。プレッシャー、ガード、そして右ストレート。しかし前回は連結部分を封鎖されたために対応しきれなかった感がある。

 今回磨いているのは、その神器をつないでいく部分。これらはアマ時代に培ってきたものでもあり、マイナーチェンジというよりも経験を結集させたフュージョン(融合)に近い。

 トレーニングから崩れない自分をつくるために。

 来年に控える東京五輪の競泳金メダル候補・瀬戸大也のフィジカルトレーニングを視察したことがあった。ぼんやりと浮かんでいたものが、明確な答えになった。

「瀬戸くんは競泳のトレーニングで鍛えられなかった筋肉をフィジカルトレで鍛えていた。自らの競技のトレーニングを一番に置いていました。フィジカルトレを一生懸命やっても競技で力を発揮できなかったら意味がない。ボクシングに置き換えると、追い込むときはフィジカルトレーニングのほうを軽くしたほうがいいかなと考えたんです」

 これまでは「フィジカルも100、ボクシングも100」という考え方に近かった。それをあらためるということだ。

「仮想の試合となるスパーリングに合わせてコンディションをつくる。そのときにしっかり動ける体にしておかないと成果が出ない」

 迷いなく、彼はそう結論づけた。

走る時期とスパーの時期を切り分けて。

 村田の体づくりを担当するのが、帝拳ジムと契約する東京学芸大大学院出身の中村正彦ストレングス&コンディショニングコーチである。これまでも村田の要望に沿いながら話し合って進めてきた。今回、ブラント戦の完敗を受けての方針も、村田の考えと一致していたという。

「ボクシングそのものにフォーカスしたいということでしたけど、僕のほうも今回はそうしたほうがいいと思っていましたから。走り込みのキャンプだけは毎日20km走ってガンガンやりました。その後スパーリングの時期に早めに入ってからは、疲れた状態でスパーの日を迎えないようにコンディションをつくっていきました」

【次ページ】 「私が見ても、いい仕上がり具合」

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