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板倉滉が味わった屈辱とめんつゆ。
コパ・アメリカで鬱憤を晴らす。 

text by

松本宣昭

松本宣昭Yoshiaki Matsumoto

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photograph byAtsushi Hashimoto

posted2019/06/15 11:45

板倉滉が味わった屈辱とめんつゆ。コパ・アメリカで鬱憤を晴らす。<Number Web> photograph by Atsushi Hashimoto

今季オランダに活躍の場を求めるも、出場ゼロに終わった板倉滉。悔しい思いをコパ・アメリカの舞台でぶつける。

私生活でも自炊を、筋トレも増えた。

 移籍から2カ月後、ようやく新居が決まった。さっそく、キッチンに立った。

「ステーキやポテトばかりの生活は、コンディションや栄養面を考えても、やっぱり良くない。日本では自炊をしたことがほとんどなかったんですけど、バランス良く食べなきゃと思って」

 初メニューは、板倉流チキンソテー定食。フライパンでチキンとブロッコリー、アスパラを炒め、そこにめんつゆをぶっかけた。

「唯一、家にあった調味料がめんつゆだったんですよ。じゃあ、それでやってみるか。お、意外といけるぞって。以来、毎日のようにそれを食べてましたね」

 食生活だけでなく、ピッチ内での意識も変えた。

「監督が使ってくれないのなら、監督に必要だと思われるようにならないといけない。そのためにも、『自分』と『今』にフォーカスする。目の前の練習に集中する。試合に出られないのなら、その分、筋トレの量を増やせます。たとえ試合前日だとしても、ガンガン鍛えました」

今季は出場ゼロに終わる。

 バイス監督は、“守備の鬼”だ。次の対戦相手のスタイルを徹底的に研究し、どのようにしてプレスをかけるのか、どのようにしてボールを奪うのかを、練習中から事細かく指示する。球際で負ければ、容赦なくカミナリが飛んでくる。

「あの練習を経験したことで、守備の意識は変わったと思います。球際も激しく行けるようになりました」

 手応えは得た。シーズンも終盤に差し掛かり、「やれる」という自信はさらに深まった。家に帰れば、野菜や味付けのバリエーションも増えた“板倉定食”をもりもり食べて、デビューの瞬間に備えた。

 しかし、残念ながら2018-2019シーズン、板倉がオランダリーグのピッチに立つことはなかった。悔しさと、焦りを嫌というほど味わったことは、本人の表情を見れば、十分に伝わってくる。それでもあえて聞いてみた。

 欧州に行って、良かったと思いますか?

【次ページ】 「無理やりにでもポジティブに」

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