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富樫勇樹の原点は恩師の言葉。
「バスケ界のカズになれ」 

text by

石川歩

石川歩Ayumi Ishikawa

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photograph byB.LEAGUE

posted2019/04/22 17:00

富樫勇樹の原点は恩師の言葉。「バスケ界のカズになれ」<Number Web> photograph by B.LEAGUE

試合当日は秋田・水町亮介(中)の引退セレモニーも行なわれ、元チームメイトの千葉・富樫勇樹(左)と田口成浩(右)が花束を贈呈。

負けたら「這って帰れ」。

 この日、試合のキーマンになった富樫と田口の恩師が体育館を訪れていた。女子日本代表、オーエスジーフェニックス、秋田ノーザンハピネッツなどの監督を歴任し、日本バスケ界に様々な功績を残している中村和雄氏だ。富樫、田口ともに、2011-14シーズンに秋田で指揮をとっていた中村のもとで、プロ選手として最初の一歩を踏み出している。

 中村は田口の最後のプレーに対して、「バカだ、バカ。優勝決定か、残り1秒であれをやるならまだ分かるけれど。でも、田口は真っ直ぐで純粋な子だからあんなプレーが出てしまうんだ。彼らしいよ」と話す。

 中村の指導の熾烈さが垣間見える、現役コーチ時代の言葉がある。

「立っている限り、可能性がある限りはいくらでも頑張れ。負けた試合では立つな、這って帰れ。立ち上がる元気を残して、試合を終えるな」

中村と過ごした「最も長い1週間」。

 田口に中村との思い出を聞くと、笑顔を浮かべながらエピソードがありすぎると前置きをして、中村と過ごした『最も長い1週間』について話してくれた。

「当時、絶対に負けられない新潟戦前の練習で、毎日毎日、僕のミスに対してカズさん(中村)に精神的にキツいことを言われ続けました。6日間我慢していたのに、7日目の練習で堪らなくなって泣いてしまった。次の日の試合は『このやろう、見とけよ』という気持ちでいっぱいで、僕は3ポイントを10本以上決めて試合に勝った。『カズさん見たか!』とやり返した気分でしたが、後から考えるとそれもカズさんの手の内だった(笑)。

 カズさんは一生の師匠、僕にとってなくてはならない人です。今でも僕は、カズさんが見ている試合は良い緊張感を持って、『見ていてください』という気持ちで試合にのぞんでいます。あの秋田戦もそうでした」

【次ページ】 富樫が秋田に負けたくない理由。

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