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「手作業に勝るものはない」雨続きの甲子園で注目される《阪神園芸》の職人に聞いた、芝もトンボも“ミリの世界”とは? 

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日比野恭三

日比野恭三Kyozo Hibino

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photograph bySankei Shimbun

posted2021/08/19 17:00

「手作業に勝るものはない」雨続きの甲子園で注目される《阪神園芸》の職人に聞いた、芝もトンボも“ミリの世界”とは?<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

雨が続いている今年の夏の甲子園で、仕事ぶりが再注目されている阪神園芸

 天気の読みも重要なスキルだ。必要なのは、あくまで甲子園球場上空の局地的予報である。

「昔、球場職員は空港に問い合わせてたけど、僕らはあんまり信用してなかった。北に六甲山、南に海という地形的なこと、それに雲の方角や風向きを見て、ひと雨きそうだから水撒くのを控えめにしようとかね。藤本さんはお父さんが漁師だったこともあって、天気を読むのがうまかった。僕らもそれを見て覚えていったんだ」

「1cmに満たない高さだと思うけどな」

 今は技術の進歩で雨雲の大きさや位置が正確に分かるようになった。グラウンド整備も機械化が進んでいる。だが辻は「手作業に勝るものはない」と言う。

「機械はでこぼこがあっても置いていく。それを見つけてトンボで削るのは人間の仕事。手と目が大事。今でもグラウンドを見ると、あ、あそこが高いなと分かる。1cmに満たない高さだと思うけどな」

 甲子園は冬の季節、土を掘り返す作業を毎年繰り返している。辻曰く、「新設のグラウンドを毎年つくっているようなもの」。その作業も昔はツルハシを使っていた。タイガースのホームであり高校球児の憧れである美しい球場は、阪神園芸の汗の結晶でもある。

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