アイントラハト・フランクフルトの冬合宿のある練習後のことだ。MFステファン・アイクナーが、鍼灸師トレーナーの黒川孝一に声をかけた。

「ちょっと足を診てくれ」

　黒川が芝生の上で施術を始めると、アイクナーは気持ち良さそうに身を委ねた。

「アイクナーはケアへの意識が高く、昨日も鍼を打ったばかり。練習中にすでに違和感を訴えていたので、近くにいるように心がけていたら予想通り声がかかった。ドイツでも空気を読むことが大事なんですよ」