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アジアカップと草の根サッカー。
~日韓戦を面白くした若手の変貌~ 

text by

芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2011/01/29 08:00

アジアカップと草の根サッカー。~日韓戦を面白くした若手の変貌~<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

日韓戦でも120分走り続けた長友。この試合の走行距離はチームナンバー1の14.15km

 おやおや、というのが正直な感想である。

 気がつけば、私は仕事を中断して拳を握りしめている。撃てとか、絞れとか、詰めろとか、馬鹿なうなり声をあげながらテレビの画面に見入っている。面白いじゃないか、アジアカップ。

 私はこれまで、アジアカップの熱心な観客ではなかった。トルシエがレバノンで、そしてジーコが中国で優勝したときも、ふうん勝ったのか、という気分しか抱けなかった。

 アジア蔑視、が混じっていたのだろうか。そんな無意識には侵されていないつもりだが、アジア勢同士のサッカーはあまり面白くないという先入観があったことは事実だ。

 理由は単純だ。技が足りない。頭が足りない。肉体がそれぞれの風土に固有の生理から脱却できず、サッカーというゲームに要求される変貌を遂げていない。従って、「勝てばいいんだろ、勝てば」のメンタリティが表に出すぎて、エレガンスを欠いてしまう。

 ざっとこういう理由で、私はこれまでアジアカップに冷たい眼を向けてきた。

 だが、今回はどうも様子がちがう。とくに準決勝の日韓戦は、2009年のWBC決勝に劣らぬほどの面白さに満ちていた。

長友は日本的でもイタリア的でもない不思議な選手になる!?

 最大の理由は、日韓両チームともに若手の成長と変貌が著しかったことだ。

 日本には、本田圭佑(24歳)、長友佑都(24歳)、香川真司(21歳)がいる。韓国には、奇誠庸(キ・ソンヨン/22歳)、李青龍(イ・チョンヨン/22歳)、具滋哲(ク・ジャチョル/21歳)がいる。

 具を除けば、全員が欧州で活躍する選手たちだ。具自身も、欧州移籍の道を選ぶのは時間の問題だろう。

 彼らは、技術だけでなく肉体までをも変貌させつつあった。私は脱亜入欧、などといっているのではない。アジア特有の柔らかさや陰翳を残したまま、欧州に著しい果断な動きや粘り強い思考力を身につけはじめた、といっているのだ。

 一例が長友の動きだ。もともと無尽蔵のスタミナと運動量を誇る選手だが、今回の彼は、攻め上がりに入った際の緩急のつけ方(とくに加速の仕方)が眼を奪う。センタリングとシュートのモーションに差がついてしまう癖はまだ修正されていないが、南ア・ワールドカップのころに比べても、判断のスピードがずっと速くなっている。

 同時に、身体の使い方も変わった。あえて稚拙な言い方をさせてもらうが、「よいしょ」の前置きが消え、走り方をいきなり変えたり、有無をいわさず相手の動きを封じたりするようになったのだ。これはセリエAで身につけた動きだろう。このまま化けつづければ、日本人でもイタリア人でもない不思議なハイブリッドに近づけるかもしれない。

【次ページ】 サッカー教育においてアジアで一頭地抜けている日本。

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