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フェンシング高円宮杯W杯を戦う
若き精鋭。松山、西藤、鈴村の覚悟。 

text by

宮田文久

宮田文久Fumihisa Miyata

PROFILE

photograph byYasunari Kikuma

posted2019/01/17 07:30

フェンシング高円宮杯W杯を戦う若き精鋭。松山、西藤、鈴村の覚悟。<Number Web> photograph by Yasunari Kikuma

全身ビームスのスーツに身を包んだフェンサーたち。写真中央上が松山、下が西藤、左が鈴村。

世界選手権で銀、西藤の今。

 さきに、ポスターの被写体となった選手たちは、誰一人決勝の舞台に上がれなかった、と書いたが、正確には誤りである。実は一人だけ、決勝の舞台に上がった選手がいた。

 西藤俊哉、である。

 前回チャンピオンでありながら、準々決勝で松山に敗れた西藤は、決勝の場で披露された、「フェンシング・ビジュアライズド(モーションキャプチャーとAR技術をつかって剣先の軌跡を可視化する)」のデモンストレーションを行うフェンサーの一人として、決勝のピストに上がったのだ。

「松山選手に負けた直後に、お願いされまして。正直、最初は素直に『はい』とはいえなくて……『ちょっと時間をください』と。今となっては、歯を食いしばってあの場に立ってよかったと思っています。

 同じ舞台ではあるけど、ああいう形で立つつもりではなかった。でも、太田雄貴会長がつくってくれた最高の舞台に立てたこと、人に注目されて戦う距離感を味わえたことは、僕にとってよかったと思います。この経験を大きな財産にするかどうかも、これからの自分にとっての“次”につながっていくはずですから」

 2年前の2017年、西藤は、躍進のシーズンを送っていた。ジュニア世界選手権で個人2位、そして世界選手権でも勢いそのままに個人銀メダル。その年の全日本でも決勝で松山に大逆転勝ちしての優勝と、まさに破竹の勢いだった。

 しかし2018年は、トップ選手として国内外からそのプレーを研究される側となったこともあり、満足な結果を残すことはかなわなかった。会場で試合を待つ彼の様子を見ても、苛立ちや苦悩が滲み出ていた。

マークされる苦しみを経験して。

「不思議な感じでした。一気に環境が変わったし、もしかしたら気づかないうちに、自分自身も変わってしまっていたからかもしれません。でも、世界選手権で銀メダルを獲らなければ、マークされる苦しみも経験できなかったと思っています。

 調子に波があった時、最後に這い上がれるか、這いあがれないか。こういう道のりは何度も味わっています。これまでとは比べ物にならないくらいデカい壁ですけど、ここでもう一発、這い上がってやろうと思っているんです」

 年をまたいで、気分を一新したという西藤。強気な発言も、「昨年はうまく思いが口にできなかったり、発言がネガティブだったり。今年は振る舞いから変えていかなきゃいけないと」という、覚悟の表れだという。

【次ページ】 東京五輪で金メダルを狙うため。

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