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高橋大輔、不変の魅力とスケート愛。
全日本選手権2位の「先」へ向かって。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAsami Enomoto

posted2018/12/25 12:30

高橋大輔、不変の魅力とスケート愛。全日本選手権2位の「先」へ向かって。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

かつてと変わらぬ芸術性の高さを見せつけた高橋大輔。全日本2位という成績は、ビッグニュースとして世界中で報道された。

世界選手権を自ら辞退。

 事実、日本スケート連盟からは、「『ミニマムスコア』をクリアすることを条件に代表選出」と打診されていた。

「ミニマムスコア」とは国際スケート連盟が世界選手権など各大会に出るためにそれぞれに設けている基準のスコアだ。

 今シーズン、国際大会に出ていない高橋はまだクリアしていない。どの国際大会でクリアするか、想定も進んでいた。

 だが、代表の中に高橋の名前はなかった。辞退したからだ。

若い選手の成長を願うからこそ……。

 代表発表会見後、1人、姿を現した高橋は胸中を語った。

「僕も迷ったところです。行きたい気持ちはやまやま。でも、世界と戦う覚悟を持ちきれなかったのが大きな理由です。

 今まで世界のトップと戦ってきて、戦う難しさや精神力は経験してきています。覚悟もないのに出るべきではないと思いました」

 もう1つ、辞退へと至った理由があった。

「海外の選手と一緒の空気を吸うことで成長できます。これからを引っ張っていく選手が経験を積むことで、日本が盛り上がっていくには舞台を経験する必要を感じます」

 自力で出場権を勝ち取れなかった若手に譲ることへの疑問の声も飛んだ。

 すると高橋は「うーん」とうなってしばし沈黙したあと、こう答えた。

「プレッシャーに打ち勝つほどの自信がないというのが大きいところもあるし、世界選手権でしか経験できないことがあります。

 僕はフィギュアスケートが好きで、これからもどんどん(他の日本人選手にも)成長していってほしいんです。

 自分が活躍したいという気持ちと同じくらい、後輩が成長して羽生(結弦)を、(宇野)昌磨を抜かしてレベルアップしてほしいという気持ちがあります」

【次ページ】 「まだ引退しないとは決めています」

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