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吉田輝星と柿木蓮の“深夜ラン”と
新星に大志を託したスタッフの思い。 

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高山通史

高山通史Michifumi Takayama

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photograph byKyodo News

posted2018/11/26 17:00

吉田輝星と柿木蓮の“深夜ラン”と新星に大志を託したスタッフの思い。<Number Web> photograph by Kyodo News

「少年よ大志を抱け」で有名なクラーク博士像の前でポーズをとる新入団選手。1位吉田と5位柿木は甲子園決勝で投げ合った。

各地域への郷土愛。

 5年目となる今年はM部長のイズムを継承した、入社1年目のF広報がプロデュースをしたのである。指名選手の顔ぶれに関係はない。4月ごろ、春先から選定に着手をする。様々な折衝を重ねて、理解と賛同を得て、多大なる協力もあって実現する。パブリックなスポット、スペースでもある。苦労自慢ではないが当方も細心の注意を払い、また先方にも負担を掛ける難調整である。

 北海道出身で強い郷土愛を持つM部長は、その意義を説く。

「古く、長く、残ってきたものには何かがある。北海道を象徴するスポットには、そこから生み出されるパワーというか、力がある。それを、来年から入団する新人たちに少しでも感じてほしい」

 その思いは、伝播していく。

 昨年のドラフト1位清宮選手の仮契約の記者会見は都内の明治記念館で開いた。担当の岩舘学スカウトの発案である。

 その時の思いが、趣深い。近隣には神宮球場、秩父宮ラグビー場が位置している。神宮球場は清宮選手が高校時代などに活躍し、慣れ親しんだ思い出のスタジアムである。そして、秩父宮ラグビー場。トップリーグ、ヤマハ発動機ジュビロの監督を務める名ラガーマンの父克幸氏と関わりが深い。そのエリアにある明治記念館を、チョイスしたのである。

仮契約では秋田にリスペクト。

 目利きの方々が放つ思いも、熱い。ファイターズが東京ドームを本拠地とした時代の右腕、北海道・東北エリアをカバーする白井康勝スカウト。10月のドラフト会議で、継続的にマークしてきた金足農業高校の吉田輝星投手をドラフト1位指名した。

 スカウトに身を転じて、初めて最上位選手を担当することになったのである。甲子園準優勝した逸材は、今回のドラフトでも最注目と断じていい1人だった。

 仮契約の記者会見の仕切りを、広報部に託していただいた。

 基本、選手が籍を置く所属先、または出身地で開くのが通例。球団としては、秋田の至宝を預かる立場である。吉田投手にとっては、プロ入り前に郷里で行う最後の会見となる可能性が極めて高い。

 キーワードの最優先は、秋田県へのリスペクト。これは美辞麗句ではなく、球団としての思いである。それを「隠し言葉」のように忍ばせたスポットを、選定すべきと判断したのだ。

【次ページ】 「セリオン」に込めた想い。

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