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吉田輝星を1位指名した日本ハム、
緊迫と高揚のドラフト当日舞台裏。 

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高山通史

高山通史Michifumi Takayama

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photograph byKyodo News

posted2018/10/29 17:00

吉田輝星を1位指名した日本ハム、緊迫と高揚のドラフト当日舞台裏。<Number Web> photograph by Kyodo News

日本ハムは1位指名で吉田輝星の交渉権を獲得した。昨年の清宮幸太郎に続き高校野球のスターが入団することになりそうだ。

担当スカウトが味わう無情。

 反面、無情でもある。自身の担当エリアから指名されなかったスカウトの方たちもいる。それはスカウト個々の眼力の差ではなく、チームの編成方針、他球団の指名状況が影響するのだ。不条理であるが、受け入れざるを得ない現実である。推薦していた選手が指名されたスカウトはすぐさま指名あいさつなどの打ち合わせを、高校など各所属先と忙しそうに行なっている。

 逆に、指名選手がなかったスカウトは少しまどろみながら、その様子を静観している。言葉は少ない。異様な雰囲気が漂っている。気持ちを切り替え、ケジメをつけて、来年のドラフトへ向けて再スタートをしようとする気概のようなムードを醸し出している。

 そして、球団史上初めて育成ドラフトで富山GRNサンダーバーズ海老原一佳選手を指名して、運命の1日は終わった。

清宮に続いて、吉田が。

 午後9時30分を過ぎたころ、解散した。広報として2度目のドラフト会議。昨年は早稲田実業学校の清宮幸太郎選手が1位指名され、今年は吉田投手だった。比較的、脚光を浴びていた2人との縁に恵まれた。その恩恵を受け、ドラフト会議の中枢にいる当事者ではなくても、2年連続で充実した1日になったのである。

 その帰り道、担当記者2人と品川駅前で偶然、遭遇した。立場は違っても、ともにドラフトのあの空気をともにした。自然な流れで、一献を傾けることになった。わずか1時間ほどだったが、すべてから解放されたのである。

 翌朝、羽田空港へ向かう。午前7時50分発の便で、秋田へと入った。出張が多いサラリーマン人生だが、初めて訪問した地である。空港から、秋田駅行きのバスへと乗車する。同じ日本海側の故郷・新潟に少し似た景色、湿気の多いしっとりとした空気に少し癒やされる。人も温かい。降車したいバス停を告げると運転手の方は親切に、いろいろとその周辺の説明をしてくれた。

 そんな優しさに包まれ、秋田駅から追分駅へ。金足農業高校の最寄駅である。そこから徒歩で、約15分。目的地へたどり着いた。

【次ページ】 金足農が日本を魅了した理由。

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