次戦で負けたらこの競争も終わり。

　もちろん、これでこの3人の序列が完全に確定した訳ではない。準々決勝でメンバー変更の可能性はゼロではないし、準々決勝を突破すれば、準決勝以降でチャンスが巡ってくるかもしれない。

　ただ、ひとつだけはっきりしているのは、次の試合（決勝T・準々決勝）で負けてしまったら、このチームでの「次」はもうないということ。

　すなわち、来年のU-20W杯の出場権を失うと、正GKの座を懸けた競争で、さらに成長できるチャンスまでも失うことになる、ということだ。

　それは試合に出ている出ていないに関係なく、この世代の日本サッカー界全体の大きな損失となる。

「2人には心から感謝してる」

　ただ……若原の抱えきれないほどの悔しさは、筆者にも手に取るように分かるのだ。ミックスゾーンで真摯に質問に答えてくれた若原だが、その目には涙を堪えているようにも見えた。

　いつも気丈な男だからこそ、死ぬほど負けず嫌いな男だからこそ、そしてどんな現実であってもしっかりと向き合える男だからこそ……若原智哉はこの辛い気持ちを未来の力に変えてくれるはずだ。

「サコも晃生も本当にいいライバルで、いい刺激を与えてくれる存在であることには変わりはありません。それに『お前は今のままではダメやぞ』ということをはっきりと分からせてもらったわけですから。

　こういう気持ちを味わった人間ほど、この後、本当に大きく成長していくのだと信じています。そう分からせてもらった2人には心から感謝してる。ただ、まだまだ大会は続くし、準々決勝に勝てば、1年後の世界も見えてくるので。

　これからも『次は俺が出る』という強い気持ちを持ち続けて、準々決勝以降は誰が出ても絶対に勝てるように、ポジティブに振る舞っていきたいですね。そして、みんなでU-20W杯を掴み獲りたいです」