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大阪桐蔭の6番が「自分は底辺」。
禁止のはずのヘッスラに真髄を見た。

posted2018/08/18 14:30

 
大阪桐蔭の6番が「自分は底辺」。禁止のはずのヘッスラに真髄を見た。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

高校野球界の頂上にいる大阪桐蔭の選手たちだが、エリート然とすることは決してない。誰よりも勝利と成長に飢えているのだ。

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中村計

中村計Kei Nakamura

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Hideki Sugiyama

 異様なプレーに映った。

 大阪桐蔭は3-2の1点リードで迎えた6回表、3四死球でつかんだチャンスに3連続タイムリーが出て、浦和学院を8-2と一気に突き放す。

 なおも2アウト三塁で、6番・石川瑞貴の当たりは、ピッチャーを強襲。ボールは、グラウンドを転々とする。楽々セーフに思えたが、石川は一塁へヘッドスライディングを見せた。

「ヘッドスライディングをするつもりはなかったんですけど、思わず出てしまいました……」

 故障防止の意味もあり、ヘッドスライディングはチームの禁止事項となっている。だが、セーフになりたい一心で思わず出てしまったのだ。

 9点目を叩き出した石川は続ける。

「夏なので、何かあったら大量失点につながる。相手をあきらめさせるまで、取れるときに何点でも取っておこうということはチーム内で話し合っていたので」

西谷監督の思想は「とれるだけとる」。

 この日、チームの2枚看板である根尾昂、藤原恭大のアベックホームラン等、計4本のホームランで11-2と華々しく勝利した大阪桐蔭だが、彼らの本当の強さは、文字通り、泥臭いプレーの積み重ねにある。

 試合が終わるまで、どんな相手であっても容赦はしない――。この春も、それを感じた試合があった。初戦、21世紀枠で出場していた伊万里を相手に大阪桐蔭は14-2で大勝した。

 21世紀枠のチームは、どのチームも、まず試合をぶち壊してしまわないかと心配している。あまりに見苦しい試合をしてしまったら、枠の存続が危ぶまれるからだ。

 しかし、監督の西谷浩一にその話をしたときも、こう平然と話した。

「とれるだけとろうと思ってました。21世紀枠だからといって、勝てるとは思ってませんので」

 大阪桐蔭は、まさにウサギを捕らえるのにも全力を尽くす獅子そのものだ。

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