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「女子でも片手懸垂」はあたりまえ。
日本人クライマーの秘密の練習法とは。

posted2018/05/31 14:00

 
「女子でも片手懸垂」はあたりまえ。日本人クライマーの秘密の練習法とは。<Number Web> photograph by AFLO

ボルダリングW杯 中国・泰安大会の表彰台に上がった、野中生萌(左)と野口啓代(中)。

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津金壱郎

津金壱郎Ichiro Tsugane

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AFLO

 ボルダリング・ワールドカップで日本代表が目覚ましい活躍を見せている。ここまで4大会を終えて、女子は野中生萌が開幕戦を制し、野口啓代は第3戦、第4戦と2連勝。男子も楢﨑智亜と藤井快が1勝ずつ。毎大会で日本代表が表彰台の中央に立っているのだ。

 それほど好調な日本代表チームを率いる安井博志ヘッドコーチは、「この結果を氷山にたとえれば、見えている一部に過ぎません。選手たちが結果を出せるように、水面下では氷山そのものを大きくする努力をしてきました。だからこそ、海面上に現れる氷山は、今後もっと大きくなると思っています」と、自信を漲らせている。

1日8時間の練習を大会で発揮するために。

 いまの日本人クライマーを取り巻く練習環境は、その施設だけでも商業ジム以外を含めれば全国で600を超えているといわれ、世界的に見ても非常に多い。それぞれの施設では一流のルートセッターが質の高いルートを設定するなどしており、課題のバリエーションも豊富だ。とにかく練習が好きな日本人に合った環境が整っているといえる。

 では、具体的にはどのようにして強化したのか。安井ヘッドコーチからは「体力を含めた体づくり」という意外な答えが返ってきた。

「ボルダリングの大会は、予選ラウンドで5課題を登り、上位20名に入れば準決勝ラウンドで4課題に挑みます。そして、上位6名のみが決勝ラウンドの4課題で優勝を争う。予選を通過するだけの体力では、決勝にはたどり着けるわけがありません。

 代表選手たちは練習熱心で、1日のうち5、6時間は登るのが当たり前で、長ければ8時間くらいやってしまう。指に穴が空いて血が出ても登ってしまう。

 だけど、その練習で培ったクライミング能力を大会で発揮するには、大会の3ラウンドを通じて出せる体力が必要なのですが、そこが日本選手たちには足りていなかった。そこで国立スポーツ科学センター(JISS)とタッグを組んで、身体的な向上に取り組んできました」

 JISSでの科学的なトレーニングやフィットネスチェックを取り入れ、選手によっては明確な数値として弱点を手にできたことが成長に繋がった。

「さまざまな項目を測定しています。ジャンプひとつとっても右足で、左足で、座ってから立ち上がってのジャンプ、反動をつけてのジャンプといったように測ります。瞬発系やランジ(ジャンプ)系が上手い選手は、その数値が高い。いろいろ測っていくと、各選手の特長や足りていない部分が客観的なデータとして表れる。選手たちにとって数字で見せられると、目はそらしにくい。それで各自がそれぞれの弱い部分を克服しようとトレーニングに励んだことが強化に繋がりました」

【次ページ】 体がタフになり、コメントも前向きに。

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野中生萌
野口啓代
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